思想の花びら 2021年10月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  この恐怖の小さな世界もただ君の手でささえられてこそ一つの世界であり、しかも君の恐怖の念はただ君の勇気にささえられて立っているものだからだ。ここには地獄落ちの道開けている、恐怖に屈する者は、思想のないやみに落ちる。さて諸君は道徳的意識とは意識自体にほかならぬ、ということがなっとくしたくはないか。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  「我ら エジプト の地において肉の鍋の側に坐り飽くまで パン を食らひし時に、エホバ の手によりて死にたらば善 (よか) りしものを、汝はこの曠野に我らを導き出してこの全会を飢えに死なしめんとするなり」
 これは イスラエル の民が奴隷状態から脱しようとして苦難の最中に、その指導者 モーゼ に向って放ったうらみの言葉である。ここに奴隷というものの本質がある。たとえ自分では奴隷と思っていなくても、困難の回避によって何ものかに束縛されている方が楽だと思う人間の通有性かもしれない。惰性の恐ろしさと云ってもよい。

 


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