思想の花びら 2022年 9月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  正義の認識が、不正をこらそうとするある怒りなしにおこなわれることはまれだ、あたかも正義などにはまったく盲目的なある種の人間がこの世に存し、そういう連中は地上から追い払わねばならぬといった調子だが、これはむろん子供じみだことだ。あらゆる情熱は不正であり、すべての人間は情熱におぼれる。この正義のための怒りが、あらゆる行為の上で正義の道連れだということもやはり本当ではない。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  モーゼ の十誡によれば、姦淫を犯した者は石をもって撃ち殺さなければならないことに定められてあった。そのことを学者や パリサイ 人が持出して、キリスト がどういう態度をとるか、試みようとしたのである。キリスト はむろん モーゼ の十誡を厳しく守ったが、しかしそれを極度に内面化することによって、一大変革を加えたことが一節によって明らかであろう。それは 「汝のうち罪なきもの」 という一言に出る。罪を外面的なものから内在的なものに転化させ、その点において姦淫の女を捕えた人々に問うたのである。

 


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