2003年 7月16日 作成 「理論編第 3章 (選言標準形)」 を読む >> 目次に もどる
2006年 4月16日 更新  


[ 補遺 ] (2006年 4月16日)

 本節では、Logic の基本形を まとめているが、最終的に、選言標準形を理解すれば良い。というのは、TM (T字形 ER手法) では、「事態」 を記述するために、選言標準形を正規形として使っているので。


● 恒真と恒偽

 まず、恒真と恒偽の意味を覚えてほしい。

 恒真とは、真理関数の真理値が 「常に真になる」 ことをいう。
 恒真関数のことを 「トートロシ゛ー」 ともいい、記号 「 I 」 を使って記述する。

 恒偽とは、真理関数の真理値が 「常に偽になる」 ことをいう。
 恒偽関数は記号 「O」 を使って記述する。

 
● 連言と選言

 任意の 2つの命題を考える (命題 p と命題 q)。

 p と q の 2つを 「AND (かつ)」 を使って構成した命題 「p かつ q」 を連言という (「p∧q」 と記述する)。
 p と q の 2つを 「OR (または)」 を使って構成した命題 「p または q」 を選言という (「p∨q」)。



[ 補遺 ] (2006年 4月16日)

 ちなみに、仮言 (p ⇒ q [ p ならば q である ]) は、否定と選言を使って記述できる。 p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q.
 この基本形は、数学の証明式のなかで使われることが多いので、(いまから、数学の書物を読もうと思っているのであれば、) 覚えておいて損はない。p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q. は、「(推論が正しいのなら、) p でないなら、q であることはない」 [ つまり、¬ (p ∧ ¬q)] を示している。¬ (p ∧ ¬q) は、(ト゛・モルカ゛ン の法則を使って、¬p ∨ ¬¬q になって、) ¬p ∨ q に変換できる。

 なお、「p ⇒ q」 と同値として、対偶 (contraposition) がある。対偶は、「¬q ⇒ ¬p」 という仮言である。ウィトケ゛ンシュタイン 氏は、「哲学探究」 のなかで、対偶を巧みに使っている (この点を クリフ゜キ 氏が的確に指摘した [ 本 ホームヘ゜ーシ゛ の 424ヘ゜ーシ゛・428ヘ゜ーシ゛ を参照されたい ])。ちなみに、TM (T字形 ER手法) は、「論理 テ゛ータヘ゛ース 論考」 を執筆したあとで、「哲学探究」 の考えかたを導入したので、哲学装置として対偶を巧みに使っていることは推測できるでしょう (たとえば、「管理過程 ⇒ 事業過程」 を 「¬事業過程 ⇒ ¬管理過程」 など)。

 




● 排中律と矛盾律

 前回、排中律を述べた。排中律は記号を使って記述すれば、以下の式である。

 p∨¬p (p あるいは、p でない)

 つまり、p と ¬p の選言 (p∨¬p) を排中律という。
 排中律は恒真である。

 p と ¬p の連言 (p∧¬p) を矛盾律という。
 p と ¬p は両立しない (「p かつ p でない」 は成立しない)。
 したがって、「p∧¬p」 は恒偽である。



[ 補遺 ] (2006年 4月16日)

 排中律は、TM (T字形 ER手法) では、entity (「event と resource」) の定義のなかで使われていることを、前回 ( 4月 1日)、述べた。

 




● 選言標準形と連言標準形

 恒真の連言 (p∧q) を考えれば、以下が成立する。

 I ≡ (p∨¬p)∧(q∨¬q) ≡ (p∧q)∨(p∧¬q)∨(¬p∧q)∨(¬p∧¬q).

 この式を 「選言標準形」 という。

 同じように、恒偽の選言 (p∨q)を考えれば、以下が成立する。

 O ≡ (p∧¬p)∨(q∧¬q) ≡ (p∨q)∧(p∨¬q)∧(¬p∨q)∧(¬p∨¬q).

 この式を 「連言標準形」 という。

 
[ 参考 ]
 (1) 論理の 「AND」 は算術の 「×」 と同値であり、「OR」 は 「+」 と同値である。
 (2) 標準形のことを正規形ともいう。

 
● 選言標準形と対照表

 T字形 ER手法は、「関係の論理 (aRb)」 を関数 [ R (a, b) ] として扱っていない。
 推論 ルール を使っている。

 T字形 ER手法の推論 ルール では、a と b が個体 (resource) であれば、R は対照表として記述される。
 対照表は選言標準形である。
 そして、対照表に対して、認知番号を賦与すれば 「event」 となる。

 対照表のなかでは、p および q が対 (真となる対、ただし、unordered pair) として記述され、¬p および ¬q は null 値として扱われている。□



[ 補遺 ] (2006年 4月16日)

 たとえば、以下を考えてみる。

  {従業員番号、従業員名称、...}. [ R ]
  {部門 コート゛、部門名称、...}. [ R ]
  {従業員番号 (R)、部門 コート゛ (R)}. [ 対照表 ]

 さて、対照表が (選言標準形の) 真理値表であるということは、以下の構造を意味している。

  {従業員番号、従業員名称、...}. [ R ]
  {部門 コート゛、部門名称、...}. [ R ]
  {従業員番号 (R)、部門 コート゛ (R)}. [ 対照表 ]
        │
        = null (...)
        │
        ├ {従業員番号 (R)、部門 コート゛ (R)} (p∧q)
        │
        ├ {従業員番号 (R)} (p∧¬q)
        │
        ├ {部門 コート゛ (R)} (¬p∧q)
        │
        └ { } (¬p∧¬q)

 「p∧q」 は 「配属」 を言及して、「p∧¬q」 は 「配属されていない従業員が存在している事態」 を言及して、「¬p∧q」 は 「従業員が配属されていない部門が存在している事態」 を言及している。「¬p∧¬q」 は、テ゛ータ として存在しない。

 さて、ここで論点になるのは、対照表の サフ゛セット ({従業員番号 (R)} および {部門 コート゛ (R)}) が 「resource ({従業員番号、従業員名称、...} および {部門 コート゛、部門名称、...}) と重複するのではないかという点である。しかし、対照表は真理値表として作用しているので、意味論上、事態の成立・不成立を示しているのであって、「entity」 を指示しているのではない。{従業員番号} が指示する対象と、{従業員番号 (R)} が言及している事態は、べつべつの対象である。たとえば、「配属されなかった理由」 を、{従業員番号、...} の entity のなかに記述するのか、{従業員番号 (R)} が言及する事態のなかに記述するのかを考えてほしい。

 




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