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2015年 1月 8日 補遺  


 

 本節では、「関係文法」── 4 つの文法 { R1, R2, R3, R4 } ──を一覧表示しています。4 つの文法は、以下のとおり。

  (1) R1 「event-対-resource」。

  (2) R2 「event-対-event」。

  (3) R3 「resource-対-resource」。

  (4) R4 「再帰」。

 そして、文法に関連する配慮点として 以下の 2点を確認しています。

  (1) R1 の文法では、「多値」 を べつの テーゼ として扱う。

  (2) 関係文法を適用する前に、関係の 「網羅性」 を験証する。

 まず、R1 のなかの「多値」 を べつの テーゼ として扱う理由は──R2 および R3 では、「多値」 は文法のなかで扱われているのですが──、「多値の OR 関係」 を 「TM の体系」 のなかで、関係文法を適用したあとで排除することにしていたので、「多値の OR 関係」 と対になるように 「多値の AND 関係 (R1 で起こる多値)」 を扱うことにした次第です。

 そして、「多値の OR 関係」 を べつの テーゼ にしていた理由は、「多値の OR 関係」 は、関係文法を適用したときに現れる現象ではなくて、項が 「多義」 になっているために起こる現象であるからです。たとえば、「商品単価」 という項 (定義域) に対して、「10,000」 と 「8,000」 という値が存在するとき、しかも、その 2つの値は排他的関係にあって [ 言い換えれば、2つの値が 「共時的(synchronique ) に並立しないので ]、「ひとつの関数のなかの ひとつの項の多値」 という現象です──個体 (主体、entity ) のあいだに適用される関係文法のなかで起こる現象ではないし、そのときに、もし、「10,000」 が 「正単価」 で、「8,000」 が 「割引単価」 であれば、意味論上、「多義」 という現象です。

 いっぽう、「多値の AND 関係」 は、関係のなかで現れる現象です。たとえば、ひとつの受注で複数・多数の商品を扱うとか。したがって、同じ 「多値」 でも、「多値の OR 関係」 と 「多値の AND 関係」 は、それぞれ、原因が相違するのですが、論理定項 (OR および AND) の作用のしかた を対比したほうが、それぞれの「多値」 の性質を際立って示すことができると判断して、「多値の AND 関係」 を 「多値の OR 関係」 と対にして べつの テーゼ とした次第です。勿論、「多値の AND 関係」 を関係文法のなかで扱っても宜しい。「多値の AND 関係」 を べつの テーゼ にしている理由は、TM の体系を説明するときに、説明しやすいからという理由です。

 関係の 「網羅性」 を調べる テクニック として、「リレーションシップ の験証表」 が用意されています。「リレーションシップ の験証表」 については、「実践編-1」 (後日説明) で具体的に説明しているので、ここでは、説明を割愛します。ただ、「関係の網羅性」 を確実に チェック していないような構成は モデル に値しないことを注意しておきます。言い換えれば、ふたつの個体のあいだに 「関係がある」 という事実を確信できると同時に、ふたつの個体のあいだには 「関係がない」 ということも確実に述べることができなければ モデル が 「妥当な構成」 にはならないでしょう。 □

 



[ 補遺 ] (2015年 1月 8日)

上記に述べた TM の 「関係文法」 のなかで純粋に数学的関数の適用は、R2・R3・R4 の 3つです──R1 は (数学的 ソリューション ではなくて) 哲学的 ソリューション です。もっと正確に言うなら、R4 の 「再帰」 が原始帰納的関数であって、R2とR3は、全順序と半順序を考慮した関数 (整列集合) です。

R1がどうして数学的 ソリューション にならなかったという理由は、拙著 「論理 データベース 論考」 に述べていますが (162 頁)、event は論理式変数 (第二階の術語) として認知できるし、個体変数 (第一階の モノ) としても記述できるという二面性をもっています──即ち、個体指示子 (identifier、entity-setter) を付与されて 「主題 (entity)」 となる事もあれば、高階の構成物として 「解釈」 できる (つまり、R (a, b) において、a と b の二項関係が三項態をなる) 事もあります。そのために、R3 (resource 対 resource、半順序どうしの関連) の文法を認めるならば、R1 の文法では、R3と矛盾を生じさせないために、「resource が event に関与 (ingress、参入) する」 というふうに考えざるを得ない──そして、この考えかたは、普段、我々が事態・事物を観る考えかたに対して違和感はないでしょう。しかし、この考えかたは、数学的には証明できない。R1の規則は、TM が抱える悩ましい問題点になっています。




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