2009年 5月16日 「技術編-28 多値の 『選言 (OR)』 関係」 を読む >> 目次にもどる

 

 「多値 (多価関数)」 は、T字形 ER手法を TM に変更するうえで、重大な変更のひとつでした。拙著の出版順で言えば、「黒本」 では、複数の値が充足される項において、「選言 (OR) 関係」 を 「多義」 として──この時点では、「多義」 というふうに説明していて、「多値」 という語を使っていなかった──「連言 (AND) 関係」 を いわゆる 「HDR-DTL (one-header-many-details)」 構成としていて、「多義」 と 「HDR-DTL」 構成とを べつべつの カテゴリー で観ていましたが、「論考」 でも、「HDR-DTL」 構成を いまだ 関数の観点で掴み切れていなかった。

 「HDR-DTL」 構成を関数の観点で扱って──すなわち、ひとつの合成関数として扱って──具象 カテゴリー・ファンクター (言い換えれば、クラス 概念) で説明したほうが至極簡単であることに気づいた時期は、「論考」 を出版した後でした。そして、「多義 (多価関数において、値が排他的 「OR」 関係になる現象)」 と 「HDR-DTL (多価関数において、値が併存的 「AND」 関係になる現象)」 を 「多値関数」 の観点で統一的に説明した拙著が 「赤本」 です。言い換えれば、「多値」 が 「OR」 関係あるいは 「AND」 関係のいずれであるかという観点で整えました。すなわち、「赤本」 では、多値を以下の ふたつの クラス で考えるようになった次第です。

 (1) MOR (多値の排他的選言関係)
 (2) MAND (多値の併存的連言関係)

 実地の仕事では、MOR のことを 「MO」 と云い、MAND のことを 「MA」 と云うことが多い。

 MOR の文法そのものは、「赤本」 103 ページ で例示したように簡単ですので、本 ページ で改めて補足説明するまでもないでしょう。

 MOR について、ひとつだけ補足説明するならば、「上限」 の問題でしょうね。MOR が生じる現象に対して、「多値の配列 (いわゆる 「項の横持ち」) を排除して、正規形として一価関数の構成にする理由は、「上限」 が不明だからというふうに説明されることが多いようですが、そういう説明では モデル の構成要件 (前提) にそぐわない。たとえば、以下の構成を例にして考えてみましょう。

  { 従業員番号、従業員名称、・・・、部門 コード (R)、部門 コード (R)、・・・ }.

 従業員が 「転部」 した履歴を記録する、とします。そのときに、部門 コード を いくつ定義すればいいのかわからない──すなわち、「上限」 がわからない──ので、実際に生じた事実を記録するように、以下の構成にする、というふうに説明されることが多いようです。

  { 従業員番号、従業員名称、・・・ }.
  { 従業員番号 (R)、部門 コード (R) }.

 { 従業員番号 (R)、部門 コード (R) }. の データ を 「並べる」 ために、なんらかの配慮がいるのですが、ここでは、争点に 直接 関与しないので省略しておきます。

 さて、もし、「上限」 が不明だからというふうに説明するのであれば、「1年間の売上高を記録する構成」 の非妥当性を説明できないでしょう。

  { 売上高 (1月)、売上高 (2月)、・・・、売上高 (12月)}.

 1年は 12ヶ月で構成されるので、「上限」 は 12月です──言い換えれば、13月はない。
 「配列」 が モデル 上──すなわち、多値関数において──妥当でない 「本当の理由」 は、モデル の正当化条件・真理条件を破るからです。すなわち、たとえば、上述の売上高の 「配列」 において、いま、4月までの値が充足されているとします──言い換えれば、5月以後の値は充足されていないとします。そうすれば、5月以後の値は、「真 (事実的な F-真)」 を問えない。すなわち、「真とされる値」 でない状態は 「構成 (モデル)」 の中に入れない──というか、もっと正確に言えば、「充足していない状態」 は 値 ではない──というのが正しい 「解釈」 でしょうね。 □

 



  << もどる HOME すすむ >>
  目次にもどる