2001年11月15日 対照表と 「event」 >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   対照表は 「event」 の例外措置か。
  ▼ ANSWER   ちがう。 逆である。
2006年12月16日 補遺  



 「event」 が対照表の特殊形である。 [ すべての 「event」 の原型は、対照表として構成される。]

 
 aRb について、a および b が resource なら (つまり、「resource 対 resource」 の関係では)、R は対照表として表現される。 [ そして、aRb を関数 R (a, b) として解釈しないなら ] 文 a と文 b は単文であり、関係 R は 2項関係の真理値表として解釈できる。つまり、R は対照表である。そして、identifier を附与された対照表が event として認知される。言い換えれば、event は対照表の部分集合である (event の集合を A とし、対照表の集合を B とすれば、A ⊂ B)。

 新しい ビジネス・モデル (ビジネス・メソッド) をつくるときに、[ 対照表が event の原型である、という性質を使って ] T字形 ER図を作図すれば効率的・効果的である。たとえば、IT コンサルタント は、以下の 2点を職責としている。

 (1) 現状の調査
 (2) 改善案の提言

 現状を調査するときに、実際の ビジネス のなかで使われた 「実 データ」 を使って、以下の 2点を整理すればよい。

 (1) 事物 (resource) 系の データ (モノ)
 (2) 事象、取引 (event) 系の データ (プロセス)

 そして、次に、整理された データ について、以下の 2点を解析しながら、ビジネス の 「強みと弱点」 を逆解析する。

 (1) 事物 (resource) 系 データ の性質 (アトリビュート) の解析
 (2) 事象 (event) 系 データ の フロー (流れ) の解析

 以上が、現状の調査である。次に、改善案の提言として、以下の 2点を解析すればよい。

 (1) 効率か [ 事象 (event) の順序対--プロセス の編成 ]
 (2) 効果か [ 事物 (resource) の順序対--プロセス の生成 ]

 事物 (resource) の順序対 (コンビネーション) を編成して、プロセス を生成する (新たな ビジネス を生成する) ときに、対照表を解析すればよい (resource と resource を組み合わせて、新たな対照表を生成して、その対照表が event になり得るかどうか、という点を検討すればよい)。そのときに、「aRb の検証表」 を使えばよい (ホームページ の 69ページを参照されたい)。「aRb の検証表」 の縦列と横列を resource だけを使って--event を含まないで--、resource の順序対として、論理的に成立するすべての対照表の可能性を検証して、そのなかから、event として成立できる対照表を探究すればよい。□

 



[ 補遺 ] (2006年12月16日)

 本文に綴られている文を読んでも、具体的な像が浮かばないかもしれないですね。
 生地、サイズ、カラー という 3つの resource を考えれば、わかりやすいでしょう。

  (1)-1 {生地、サイズ}.
  (1)-2 {{生地、サイズ}、カラー}.

  (2)-1 {生地、カラー}.
  (2)-1 {{生地、カラー}、サイズ}.

 (1)-1 では、{生地、サイズ} の対照表は 「裁断」 という event を言及しています。
 (1)-2 では、{{生地、サイズ}、カラー} の対照表は 「洗い」 という event を言及しています。
 (2)-1 では、{生地、カラー} の対照表は 「洗い」 という event を言及しています。
 (1)-2 では、{{生地、カラー}、サイズ} の対照表は 「裁断」 という event を言及しています。

 すなわち、「複数の resource に対して、resource の組 (2項関係) を変えれば、event の並びを変えることができる」 ということを示しています。たとえば、いまの事業過程が、(1)-1 および (1)-2 であれば、(2)-1 および (2)-2 で示したように、resource の組を変えることによって、事業過程を再編成することができます。(裁断、洗い) の プロセス構成と (洗い、裁断) の プロセス 構成のどちらが、いまの事業環境を考慮して、効果的・効率的か を検討すれば良いでしょう。

 本文中、resource を事物として、event を事象として言い換えていますが、TM (T字形 ER手法) では、event が定義されているので、それらの言い換えは問題ないでしょう。ただ、event を定義しないまま、「事物・事象」 とか 「もの・こと」 などという あいまいな用法は使わないほうが良いでしょうね。というのは、たとえば、前述した対照表{生地、サイズ} は、性質として、日付が帰属すれば、事象 (こと) として考られますが、いっぽうで、(event の結果として) 「型紙」 という事物 (もの) として考えることもできます。「事物・事象」 とか 「もの・こと」 という ザッとした概念では、「妥当な構造」 を作ることができないという点に注意して下さい。

 あるいは、「事物・事象」 あるいは 「こと・もの」 を判断するために、名詞形・動詞形を使うことも妥当でない点に注意して下さい。たとえば、日本語の 「分類」 に対して、英語では、動詞形が classify で、名詞形が classification ですから動詞形・名詞形の判断はできますが--それでも、order [ 注文 (する)] のように、名詞形と動詞形が同じ単語もあるので、それほど、単純な判断にはならないのですが--、日本語では、名詞 「分類」 に対して--{分類 コード、分類名称} という resource に対して--「...する」 付して 「分類する」 としても、「事象」 あるいは 「こと」 にはならないでしょう。resource であるとか event であるという判断は、あくまで、「個体の性質 (あるいは、関係の性質)」 に因るのであって、品詞ではないでしょう。もし、名詞形・動詞形を使うというのなら、動名詞を どう判断すれば良いのかしら。

 さて、対照表は、構文論と意味論では、以下のような文法を適用されています。

 (1) 構文論上、resource の組として、resource の文法を適用する。
 (2) 意味論上、指示規則として、event を言及する。(あるいは、「制約」 を示す。)

 対照表は、意味論上、以下の 2点を示しています。

 (1) event を言及する。
 (2) (resource の関係に適用される) 「制約」 を示す。

 意味論上、「言及する」 という言いかたと 「指示する」 という言いかたを、私は、区別しています。「指示する」 という言いかたは、認知番号が付与されている意味で使い、「言及する」 という言いかたは、認知番号が付与されていない意味で使っています。すなわち、対照表のなかで、性質として 「日付」 が帰属して、かつ、認知番号が付与されている事態を 「event」 としています。したがって、event は、対照表の部分集合です。対照表は、event の性質をふくんで、さらに、ひろがっています。すなわち、event ではない対照表もあるということです。event でもない対照表が 「(resource に対する) 制約」 を示す対照表です。

 したがって、事業過程・管理過程を分析するのであれば、対照表は、つねに、その 2つの性質 (「event」 および 「制約」) の観点から吟味しなければならないでしょうね。たとえば、前述した{生地、サイズ} という event を言及する対照表を考えれば、いっぽうで、「或る生地に対して、或る サイズ しか適用しない」 という 「制約」 があるかどうかも検討して下さい。




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