2002年 2月23日 作成 単称化と存在化 >> 目次 (作成日順)
2007年 4月16日 補遺  



 
 「全称」 と 「存在」 と 「単称」 の間には、以下の論理式が成立する。
 (全体集合 L のなかの任意の メンバー を x とし、或る具体的な メンバー を xとする。)

 (1) 「全称」 の単称化  ∀xP(x) ⇒ P(x).
 (2) 「全称」 の存在化  ∀xP(x) ⇒ ∃xP(x).
 (3) 「単称」 の存在化   P(x) ⇒ ∃xP(x).

 (2) は、(1) と (3) を前提にして、モーダス・ポーネンス から導くことができる。
 {∀xP(x) ⇒ P(x)}∧{P(x) ⇒ ∃xP(x)} ⇒ {∀xP(x) ⇒ ∃xP(x)}.

 さて、「全称」 と 「存在」 の論理的否定は、(ド・モルガン の法則を応用すれば) 以下のようになる。

 (1) ¬{∀xP(x)} ≡ ∃x¬P(x).
 (2) ¬{∃xP(x)} ≡ ∀x¬P(x).

 以下に証明する。

 ¬{∀xP(x)} ≡ ¬(P∧P∧P...∧P
          ≡ ¬P∨¬P∨¬P...∨¬P
          ≡ ∃x¬P(x).

 すなわち、「全称」 の否定は 「存在」 になる。
 言い換えれば、「すべての x は P である」 の否定は、「或る x は P でない」 となる。

 ¬{∃xP(x)} ≡ ¬(P∨P∨P...∨P
          ≡ ¬P∧¬P∧¬P...∧¬P
          ≡ ∀x¬P(x).

 すなわち、「存在」 の否定は 「全称」 になる。
 言い換えれば、「或る x は P である」 の否定は、「すべての x は P でない」となる。

 さて、以上の基本がわかれば、2項関係 (aRb) の量化を扱うことができる。
 たとえば、以下の文章を記号列として記述することができるようになる。

 (1) 営業所の少なくとも 1つには、少なくとも 1人の正社員がいる。
 (2) すべての営業所には、すべて正社員ばかりである。
 (3) 正社員ばかりの営業所が、高々 3つある。

 以上の文章が、[ R (a, b) のなかで ] relation を生成したり サブセット を生成したりするために解析されなければならないことは理解できるであろう (後述、「量化の練習問題 (その 2)」 を参照されたい)。
 次回は、2項関係のなかで、「全称」 と 「存在」 の関係を扱う。□

 



[ 補遺 ] (2007年 4月16日)

 量化記号を使って、「空集合」 を定義してみましょう。
 すなわち、「すべての」 と 「... が存在する」 という量化を使えば、「空集合」 を定義できるということです。「空集合」 は、以下の性質をもっています。

 (1) 「メンバー がいる」 を否定する (「メンバー がいない」 ということ)。
 (2) 「メンバー がいない」 という集合が存在する。

 (1) は、量化記号を使えば、∀ x P { ¬ (x ∈ A) } と記述できます。
 すなわち、「すべての メンバー について、「メンバー がいる」 の否定形 (「メンバー がいない」 と同値) という性質をもつ、ということです。

 (2) は、∃ A として、「そういう集合が存在する」 と記述できます。

 したがって、(1) と (2) を使えば、以下の表現になります。

   φ ≡ ∃ A ∀ x P { ¬ (x ∈ A) }.




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