2002年 5月31日 作成 英語の文例集 (その 1) >> 目次 (作成日順)
2007年 7月16日 補遺  


 
 TH さん、きょうは、「英語の文例集」 についてお話しましょう。

 英語の文例集としては、collocation を豊富に収録した「新編 英和活用大辞典」 が市販されていますが、ここでいう文例集というのは、(前回の 「日本語の文例集」 のなかでも綴りましたが) 「表現集」 としての文例集です。
 つまり、英文を綴っている最中に、どのように物事を表現したらよいのか行き詰まってしまったときに参照する文例集です。

 そういう 「表現集」 は、(以前の 「問わず語り」 のなかで対訳本を読みながら和英辞典を作成することをお薦めしましたが) 対訳本を読みながら、気に入った文章を ノート に書き写したりしていれば、自ずから蓄積できるのですが、多読した人々でも、広範な領域の文例を収集することには限界があるでしょうから、いざ、英語で文章を綴ろうとしたときには、適切な文例を得ることが、なかなか、むずかしい。

 以前の 「読書案内」 のなかで 「英語の アフォリズム 集」 を記載しましたが、「アフォリズム集」 を文例集として使えばよいでしょう。自らの考えかたに似た文例を 「英借文」 として使えばいい。

 たとえば、「歳をとった」 ということを主題にして 1つの段落を綴ろうとすれば、「I'm getting old」 というふうに始めても、ペン が止まってしまうのではないでしょうか(笑)。そういうときには、「アフォリズム 集」 を、数冊、参照してみればいいでしょう。
 たとえば、今、僕のてもとにある 「Milton Berle's Private Joke File」 を参照して、「AGE」 を調べたら、113 の文例が収録されていました。それらのなかから、自らの考えかたに似た文例を探せばよい。たとえば、以下の文例に僕は共感しました。

    Life isn't fair. The young don't know what to do, and the old can't do what they know.

 「若者には、体力があるけれど、なにをしたらいいのか、わかっちゃいないけれど、年寄りは、(それなりに人生経験を加えて知恵を得て) なにをしなければわかってきたけれど、いかんせん、それをやるには、もう体力がない」 ということを英語にすれば、以上の英訳になるでしょう。
 この文例は達意の文なので、そのまま使えば、「だれかの口移し (入れ知恵)」 であることがばれてしまいますから(笑)、この文例を以下のように自らの英語力に相応する文に直せばいいでしょう。

  When I was young, I didn't know what to do, and I'm aging when I have to know I can't do what I know.

 (拙い英文ですが、それでも、この文を読んだ英語圏の人々は、この ユーモア に笑ってくれるでしょう。)
 以下の文例は 「英借文」 としては使えないのですが、読んだとき、思わず爆笑してしまいました。

    "How old do you think I am?"  "You don't look it."

 てもとにある他の 「アフォリズム 集」 (HANDBOOK OF 20TH CENTURY QUOTATIONS) のなかから、「AGE」 を調べたら、7つの文例が記載されていましたが、そのなかから、以下の 2つの文例は使えそうですね。

    A very old twelve.
    I'd like to go on being 35 for a long time.

 文例を探すために 「アフォリズム 集」 を読んでいたのですが、記述の面白さにひきこまれて、文章を綴ることを忘れてしまうこともあるので、注意してください(笑)。
 さて、「読書案内」 のなかに記載した 「英語の文例集」 (75ページ) を再度読んで、数冊ほど用意してください。
 きっと、役に立つでしょう。 □

 



[ 読みかた ] (2007年 7月16日)

 英語の quotations を記載した書物を私は数多く所蔵していますが (67ページ 参照)、(それらは、住んでいる所とは べつの アパート を借りて使っている) 書斎のほうに置いてあって、家で仕事をするときの机の側には、以下の 4冊を常備しています。

    "Thematic Dictionary of Quotations", Bloomsbury.
    "Handbook of 20th Century Quotations", Sphere Reference.
    「新英和笑辞典」、研究社
    「英語ことわざ辞典」、三省堂

 本 エッセー では、quotations の書物を 「英語の文例集」 として使うように助言しています。「文例集」 として使うということは、いっぽうで、「着想を得る」 ための reference book として使うこともできるでしょうね。たとえば、「新英和笑辞典」 は、本 ホームページ の 「佐藤正美からの一言 メッセージ」 のなかで綴っている 「devil's advocate」 の底本です。文を綴っている最中で--それが英文であれに日本語文であれ--、新たな概念が浮かんだときに、まず、quotations を調べるようすれば、その着想を膨らましてゆくのに役立つでしょう。

 さて、「文例集」 としての quotations は、和英辞典を補うために役立ちます。たとえば、新英和活用大辞典は、豊富な例文を記載していますが、例文は単文を単位としていますし、「思想」 を述べるときに使える文は、ほとんど、収録されていないと言っていいでしょう--たとえば、「愛っていうのはね、、、」 とか 「人生っていうのはね、、、」 という英文を綴るときに、和英辞典のなかから例文を探そうとしても、ほとんど、借用できる文はないでしょう。そういうときに、quotations が役立ちます。なんらかの思想上の こみ入った文を綴ろうと思えば、和英辞典よりも quotations のほうが役立ちます。私は和英辞典を貶しているのではない。逆に、quotations のなかから、たとえば、「値段は通知なしに変更される」 という商業文を綴ろうと思って例文を探しても的外れでしょう。和英辞典 (ただし、例文が豊富に収録されている辞典) と quotations を併用すれば、実用に役立つということです。




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  佐藤正美の問わず語り