2003年 3月 1日 作成 江戸時代 (庶民の生活、中級編) >> 目次 (作成日順)
2007年 8月 1日 更新  



 庶民の生活 (都市生活・山漁村生活・農民生活) を概説した史料・資料を記載します。

 次回は、「大奥・御殿女中・遊女・被差別民衆」 を紹介します。



[ 読みかた ] (2007年 8月 1日)

 江戸時代の庶民生活 (世相史) は、昭和時代の それに次いで、私の興味が強い対象です。どうして、私が江戸時代の世相史に興味を抱いたのかという理由を確実に列挙することは難しいかもしれない。私が昭和史に興味を抱いた理由は、みずからの産まれ育った時代 (1950年頃から 1970年代なかば) を知りたかったからです。そして、昭和時代の世相史を調べているうちに、(大正時代・明治時代へと遡って、) 江戸時代にまで調査の対象が芋蔓式に拡がったという次第です。

 江戸時代の世相史を調べているうちに、江戸時代の生活文化に対して、なにかしら、「親和感」 を覚えたのは確かです。その 「親和感」 は、私が村 (海辺の寒村 [ 半農半漁の村 ]) で育った原体験の感覚に相通じるからかもしれない。したがって、江戸時代の 「庶民」 といっても、私が共感を覚える 「庶民」 は、農民であって、「工・商」 ではない。

 江戸時代の中心地は 「江戸」 ですが、「江戸」 が 「東京」 と改称したのは 1868年 9月 (慶応 4年 7月) で、1878 年 (明治 11年) に府制が導入され、1889年、15区に分けて東京市とされました。1932年に、隣接する町村を併合して 35区になって、1943年に府・市を廃止して都政を布いて、1947年に 23特別区・市・郡などの区画が定められました。現代の時点から 「東京」 と改称した時点まで遡っても、わずか、150年くらいの近い過去に 「江戸」 が存在していたということです--私は、(昭和 28年生まれで) 54歳であることを鑑みれば、150年というのは、それほど古い過去ではないでしょう。
 日本の 「高度成長」 は、1955年から 1973年までをいうそうですが--ちょうど、私が生まれてから青春時代を送った時期ですが--、「高度成長」 以後の 「東京」 は、世界の都市のなかでも大都市になって、周辺地域 (埼玉県・千葉県・神奈川県など) が 「東京」 の ベッドタウン (衛星都市) になって、「東京」 が 1つの 「生産工場 (仕事場)」 化してきて、「江戸」 の旧時を偲ばせる事物・風習は、ほとんど、遺っていない状態になりました。

 「江戸」 も、(出入りの自由さは制限されていましたが、) いまの 「東京」 に似ていたようです。江戸の人口は、百万人ほどで、当時、すでに、世界のなかでも大きな都市であったといわれていますし、江戸の人口の半数は武家の人口でした。つまり、江戸の人口には偏りがあって、「士」 のみで 50%を占めて、あとの 50% は 「農工商」 を合わせた人口で、大多数の武家の生活を賄う土壌として、「農工商」--とくに、「商」--の生活があったといってもよいでしょうね。

 江戸の町なかでは、現代の道路標識などないし、武家も表札を立ててはいなかったので、場所を訪ねるのが一苦労であって、「切絵図 (地図)」 が重宝されたようです。
 「江戸八百八町」 といっても、(現代でいえば、新宿とか池袋とか渋谷などように、) 重立った界隈があって、日本橋界隈・神田界隈・上野界隈・浅草界隈・深川界隈・本所界隈・向島界隈・山の手・芝・高輪・品川界隈が賑わっていました。

 百万都市とはいっても、ダウンタウン (市街地) は日本橋から 5キロ圏内であって、それからさきは農村地帯だったようです。隅田川の東田園地帯は、もともと、水田だったそうですが、江戸が栄えるにつれて、野菜作りに転地したそうです。現代のように高度な冷凍技術があれば遠い地域から生野菜などを運搬することができますが、冷凍技術のない当時では、生野菜を遠い地域から運搬することができなかったので、江戸近郊の農地は、ほとんどが生野菜の栽培地だったようです。魚類は、江戸前の海で豊富に獲れたようです。佃島 (つくだじま) は、徳川家康が摂津から漁師を集めて作った町です。「佃煮」 という保存食品は、佃島が発祥地ですし、江戸後期には、海苔の養殖が盛んになって、「浅草海苔」 という名物も出てきました。蜆 (しじみ) は、隅田川で、一年中、獲れたそうですが、土用蜆 (夏) と寒蜆 (冬) が美味だったそうです--業平橋の付近で獲れる蜆は、とくに、「業平蜆」 として江戸名物だったそうです。
 田植えは、(現代では早稲が多いので、梅雨前におこないますが、) 江戸時代には、梅雨の頃--現代の田植え時期に比べて、1ヶ月ほど おそい時期--だったそうです。

 以前にも綴りましたが、江戸時代に関する史料が豊富に遺されているので、まず、歴史の専門家が記した入門書 (江戸全般に関する書物) を読んで全体像を掴んで、それから、みずからが興味を抱いた領域の史料を丁寧に読めば--勿論、専門家の記した書物の助けを得てのことですが--、われわれ シロート でも、江戸時代に関して、「具体的な」 知識を得ることができるでしょう。





 ▼ [ 庶民の生活 ]

 ● 江戸時代 町人の生活、町村栄太郎 著、雄山閣

 ● 行商人の生活、塚原美村 著、雄山閣

 ● 江戸の諸職風俗誌、佐瀬 恒・矢部三千法 編著、展望社

 ● 豪福商人風俗誌、小野武雄 編著、展望社

 ● 江戸のあそび (町人文化百科論集 1)、芳賀 登 編、柏書房

 ● 江戸の舞と踊の風俗誌、小野武雄 編著、展望社

 ● 江戸のわかもの考 (歴史のなかの若者たち 3)、野口武彦 著、三省堂

 ● 江戸時代 大流行の富突興行と熊野三山の富興行、倉本修武、大阪書籍

 ● 近世農政史料集 (江戸幕府法令) [ 上 ]、児玉幸多・大石慎三郎 編、吉川弘文館

 ● 近世農政史料集 (江戸幕府法令) [ 下 ]、児玉幸多 編、吉川弘文館

 ● 近世農民生活史、児玉幸多 著、吉川弘文館

 ● 百姓一揆の年次的研究、青木虹二 著、新生社

 ● 北前船頭の幕末自叙伝 (川渡甚太夫一代記)、師岡佑行 編集解説、師岡笑子 現代語訳、柏書房

 ● 江戸結髪史、金沢康隆 著、青蛙房

 ● 江戸の男女関係、田中香涯 著、博文閣出版

 




 ▼ [ 図録 ]

 ● 江戸の生業事典、渡辺信一郎 著、東京堂出版

 ● 人物・近世産業文化史、田村栄太郎 著、雄山閣

 ● 図録 都市生活史事典、原田伴彦・森谷尅久・芳賀 登・熊倉功夫 編、柏書房

 ● 図録 山漁村生活史事典、秋山高志・前村松夫・林 英夫・三浦圭一・森 杉夫 編、柏書房

 ● 図録 農民生活史事典、秋山高志・前村松夫・林 英夫・若尾俊平 編、柏書房

 ● 江戸庶民風俗図絵、三谷一馬 著、三崎書房

 ● 江戸の遊戯風俗図誌、小野武雄 編著、展望社

 ● 図説 庶民芸能 江戸の見世物、古河三樹 著、雄山閣 BOOKS 8

 ● 流行の風俗図誌、小野武雄 編著、展望社

 ● 江戸の物売、松宮三郎 著、東峰書房

 ● 江戸看板図譜、林 美一、三樹書房

 ● 江戸店舗図譜、林 美一、三樹書房

 ● 江戸商売図絵、三谷一馬、三樹書房

 ● 図絵 江戸おんな百姿、花咲一馬 編、三樹書房

 ● 江戸入浴百姿、花咲一男、三樹書房

 ● 絵本 小茶屋風俗考、佐藤要人 著、有光書房

 


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