2005年 3月 1日 VE のあいだに成立する関係 >> 目次 (テーマ ごと)
  ● QUESTION   VE のあいだにも、関係は成立するのではないか。
  ▼ ANSWER   成立する。ただし、VE のあいだでは、あくまで、「VE の VE」 として扱う。
2010年 3月16日 補遺  



[ データ 構造 ]

  証券{証券番号、証券契約日、・・・申込者氏名、申込者住所、・・・代理店名称、・・・}.

 
[ 事業の前提 ]

 (1) 申込者に対して、コード (申込者番号) を付与していない。
 (2) 証券は、本店が管理しているが、申込者を管轄しているのは代理店である。

 本店では、代理店に対して、代理店番号を付与しているが、ここでは、証券を資料として、T字形 ER図を作成するので、代理店番号を入手できていない、とする。
 また、証券番号の値は、すべての代理店を適用区域として、「一意」 である、とする。

 
[ 考えかた ]

1. VE の切り出し

 まず、証券を資料にして、命題論理方式を使って作図すれば、以下のような構造になる。

 __________________
  証券番号    |  証券契約日
            |    :
            |  申込者氏名
            |  申込者住所
            |    :
            |  代理店名称
            |    :

 
  証券契約 [ E ]
  {証券番号、証券契約日、・・・}.
   |   |
   |  証券. 申込者 [ VE ]
   |  {証券番号 (R)、申込者氏名、申込者住所、・・・}.
   |
  証券. 代理店 [ VE ]
  {証券番号 (R)、代理店名称・・・}.

 
 申込者と代理店は、それぞれ、(「event」 のなかに混入している 「resource」 として、) 「証券契約」 entity に対して、「みなし」 entity となる。ただし、「みなし」 entity のあいだでは、相関関係が考慮されていない。

 
2. VE のあいだの関係

 次に、リレーションシップ の検証表を使って、関係を検証する。

  証券 申込者 代理店
証券      
申込者    
代理店  


 (注意)
  以下の点は、実際には事業過程のなかで成立しているが、いまは、考慮外とする。
  (1) すでに契約した証券を、新たな契約に切り替える。(証券の再帰)
  (2) 代理店のあいだでは、振り替えがある (代理店の再帰)

 さて、リレーションシップ の検証表を作成して、それぞれの entity (「みなし」 entity も対象として) のあいだに成立する関係を確認したら、代理店が申込者を管轄している事実がわかった、とする。
 とすれば、以下の構造として修正しなければならない。

  証券契約 [ E ]
  {証券番号、証券契約日、・・・}.
   |
  証券. 代理店 [ VE ]
  {証券番号 (R)、代理店名称・・・}.
   
  証券. 申込者 [ VE ]
  {証券番号 (R)、申込者氏名、申込者住所、・・・}.

 
 もし、代理店番号を使うとすれば、以下の構造になる。

  証券契約 [ E ]
  {証券番号、代理店番号 (R)、証券契約日、・・・}.
   |   |
   |  証券. 申込者 [ VE ]
   |  {証券番号 (R)、代理店番号 (R)、申込者氏名、申込者住所、・・・}.
   |
  代理店 [ R ]
  {代理店番号、代理店名称・・・}.

 
 証券契約のなかの代理店番号(R)は、「証券. 申込者」 のほうに移される点に注意されたい。
 関数従属性から判断すれば (あるいは、「TM の体系」では)、以下の構造が良い。

  証券契約 [ E ]
  {証券番号、代理店番号 (R)、証券契約日、申込者氏名、申込者住所、・・・}.
   |
  代理店 [ R ]
  {代理店番号、代理店名称・・・}.

 
 では、どうして、わざわざ、VE を生成するのか、といえば、申込者という 「resource」 的性質に対して、注意を促すことが目的である。たとえば、申込者の誕生日を記録して、誕生日には、花を贈るとか、あるいは、年齢に相応する商品を提示するとか、さらには、申込者の家族構成を記録して、今後、ほかの商品 (たとえば、子息のために、学資保険とか) を提示できるようにするとか、申込者を「resource」 として捉えて、管理過程のなかで、管理対象とするのかどうか、という点を検討をする。つまり、申込者に対して、「resource」 としての コード 化を検討することを目的としている。

 「みなし」 entity は、「TM の体系」 のなかには入っていない。「TM の体系」とは切り離して、意味論を検討するために、「TM’の体系」 のなかで、扱われる。もし、申込者に対して、意味論的な検討が終われば──そして、「resource」 としての コード 化をしないのであれば──、実装形として、以下のように、VE を、もとの entity にもどしても良い。

  証券契約 [ E ]
  {証券番号、代理店番号 (R)、証券契約日、・・・}.
   |   
   |  証券. 申込者 [ VE ]
   |  {証券番号 (R)、代理店番号 (R)、申込者氏名、申込者住所、・・・}.
   |
  代理店 [ R ]
  {代理店番号、代理店名称・・・}.

 
 ちなみに、申込者番号が付与されたとすれば、以下の構造になる。

  証券契約 [ E ]
  {証券番号、代理店番号 (R)、申込者番号 (R)、証券契約日、・・・}.
   |   |
   |  申込者 [ R ]
   |  {申込者番号、申込者氏名、申込者住所、・・・}.
   |   |
   |   ├ 代理店. 申込者. 対照表
   |   | {代理店番号 (R)、申込者番号 (R)}.
   |   |
  代理店 [ R ]
  {代理店番号、代理店名称・・・}.

 
 なお、この対照表は、「event」 ではなくて、「validation-rule」 を示す。

 



[ 補遺 ] (2010年 3月16日)

 本文で述べているように、VE (「みなし」 entity) は、TM の体系には入れていません。
 TM の体系は、以下のとおり。

  (1) 個体の認知 (個体指定子)
  (2) 並び (全順序と半順序、「event と resource」)
  (3) 関係の文法
  (4) 切断 (周延、セット と サブセット)
  (5) 多値 (多価関数、OR 関係と AND 関係)

 以上が TM の体系です。
 TM は、「event と resource」 という 「意味論的」 概念を導入していますが、それらは、関係において 「項の並び」 を意識しているので、構文論的性質が強い。言い換えれば、TM は、関数と集合を前提にした文法です。

 ただ、TM で構成した グラフ は、かならずしも、「完全性」──現実的事態と一致して 「真」 とされる状態──を実現している訳ではない点に注意してください。たとえば、TM を適用して構成した 「従業員」 entity では、以下の状態になっているでしょう。

  { 従業員番号、従業員名称、・・・、入社日、・・・ }.

 すなわち、「入社日」──「入社」 という事態を記述する項──が 「resource」 のなかに混ざった状態になっています。この 「入社日」 を 「resource」 から排除する文法は TM のなかにない。しかし、TM は、個体を 「event と resource」 に切断しているので、「event」 の性質が 「resource」 のなかに混ざっている状態は、「妥当な」 構造ではない。

 その状態を 「意味論的に」──現実的事態と対比して──修正するのが TM’ (「みなし」 概念) です [ 正確に言えば、「TM + 『みなし』 概念」 の体系が TM’ です ]。言い換えれば、構文論 (文法) の適用ではなくて、意味論の調整です。TM’ の 「みなし」 概念には、以下の 2つが用意されています。

  (1) みなし entity (Virtual Entity、VE)
  (2) みなし スーパーセット (class、クラス 概念)

 いずれの 「みなし」 概念も、TM の文法で構成された グラフ に対して適用するので、文法がない──「みなし」 概念には、TM で使われているような 「個体の認知」 「関係の文法」 がない。したがって、VE どうしのあいだでは、「event と resource」 に対して用意されている文法を適用しない [ 適用できない ]。VE どうしのあいだでは、本 エッセー で述べたように、「VE の VE」 を構成するのみです。





  << もどる HOME すすむ >>
  データ解析に関するFAQ