2022年 9月 1日 「1.1 『意味』は形式(文法)に載って運ばれる」 を読む >> 目次に もどる


 本章 「モノ と関係」 は、次章 「構文論と意味論」 への導入部として執筆しました──私が力説したい意見は、次章 「構文論と意味論」 だったのですが、意味論が やたらに [ 当たり前のごとく ] 全面に出されている いわゆる 「モデリング」 界隈の現状では、「構文論と意味論」 を いきなり述べても反感を喰らうだけなので、モデル の素材である 「モノ と関係」 を どのように考えればいいのかを先ず導入部として──「構文論と意味論」 への伏線として──綴った次第です。

 本書は、入門書として執筆したので──入門書として執筆するように出版社から要請されていたので──、こんな簡単なことを どうして一々説明しなければならないのかと私が思うことでも、できるかぎり わかりやすく書いたつもりです (そして、読みやすくするために口語調で綴りました)。「『意味』 は形式 (文法) に載って運ばれる」 などということは、今さら あえて言わなくても中学生でもわかることでしょう。しかし、その当たり前のことを、当たり前であるがゆえに、大人になると つい忘れてしまって、「意味」 ということを喧 (かまびす) しく騒ぎ立てるようです (苦笑)。特に、「モデリング」 界隈では、「意味論」 が金科玉条のごとく大前提にされているようです (苦笑)。本書は、入門書そして教科書として執筆してほしいという出版社からの要請があったので、私は私見を抑えて、数学基礎論の基礎技術に従って モデル 作成技術を述べましたが、その制約束縛がなければ、私は私見を もっと大々的に述べたでしょう──私の私見とは、、、「意味論はお断り」と (笑)。もっと はっきり言えば、モデル 作成では、DA (Data Analyst、モデル 作成者) の価値観に依る 「解釈」 など聞きたくもないというのが私の正直な感想です (DA の価値判断 [ 人生論? ] など聞きたくもない)。

 事業過程に関与している ユーザ は、事業の文脈のなかで 「情報」 を伝達していて (「意味の使用説」)、その 「情報」 を素材にして形式的構造 (モデル) を作る DA は、「情報」 のなかの単語と事業のなかで管理対象になっている モノ との対応を モノの 「意味」 として把握するでしょう (「意味の対象説」)。したがって、DA にとって、モノ の 「意味」 というのは、「情報 (文字列)」 のなかに記述されている 「値」 でしょう (そして、その 「値」 が 「真される値」 であることを保証する制約束縛も付帯しています)。

 ただ、それぞれの個々の 「情報」 (たとえば、受注伝票などの原帳票) の 「値」 は、個々の断片的な 「情報」 のなかでしか 「意味 (すなわち、値)」 を示していない。その 「意味 (すなわち、値)」 が事業のなかで どのような役割を果たしているのかは、事業の文脈のなかでしか わからない。事業の文脈は、モノ の関係として記述できます。したがって、事業の構造 (モノ と モノ との関係) がわかれば、個々の 「値」 の 「意味」 がわかるでしょう。モデル 作成の目的は、「情報(文字列)」がその断片的素描しか与えなかった単語の 「意味」 を事業構造 (文脈) のなかで実現することにあるのです。

 モノ と関係という実相は、ユーザ 側で すでに ケリ がついている、それを形式的構造として組み立てる (変換する) のが DA の仕事でしょう。モデル 作成技術というのは、その形式的構造をつくるための論理法則群 (公理系) なのです。だから、DA の個人的な・意味論重視な 「解釈」 など私は拒絶しているのです。そして、意味論がもてはやされている 「モデリング」 界隈に対して、「形式こそが──否、形式のみが──『意味』 を保存する」 という至極当たり前のことを あえて言わなければならなかったということを私は嘆いているのです。 □

 




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