2022年12月15日 「2.1 事業過程は「情報」を使って管理されている」 を読む >> 目次に もどる


 本節では、事業過程と管理過程との関係について述べています。その関係を一言でいえば、「事業では、『管理』 のない 『取引』 も、『取引』 のない 『管理』 もない」 ということです。そして、管理過程では、事業過程で生起する事象・事物そのものの他に それらの事象・事物についての管理資料 (知りたい知識、伝えて共有したい知識) が作成されています。

 管理資料は、管理対象の事業に従事していて、生活様式 (事業のやりかた) を共有している人たちのあいだで伝達されています。すなわち、同じ生活様式のうえで ことば (の意味) が伝達されているということです (これを 「意味の使用説」 と云います)。その事業のなかに、システム・エンジニア が一時的に派遣されて、ユーザ が共有している 「意味」 を聴取しながら正確に把握するなど ムリ なことでしょう──なぜなら、生活様式 (事業構造、事業の文脈) を共有していないのだから。システム・エンジニア と ユーザ とのあいだに起こる要件定義の齟齬というのは、1970年代から今に至るまで くり返し指摘されてきているではないか。半世紀にもわたって同じ問題が起こっているのであれば、やりかたを変えるのが当然ではないか。他のやりかたを探すのであれば、事業を分析する/設計するのは システム・エンジニア の仕事であるという生意気な顔を システム・エンジニア がしなければいいだけのことです。

 システム・エンジニア の仕事は、「事業を プログラミング する」 ことです。そして、プログラミング の対象となるのは、事業全体のなかで 「意味 (すなわち、値)」 を付与されている 「情報 (管理資料)」 です。つまり、事業の全体構造を把握して、その構造のなかで しかるべき役割を担っている 「情報」 を入力にするのが システム・エンジニア の仕事でしょう。そして、事業の全体構造を把握するということが、「現実的事態 (事実) を写像した形式的構造 (モデル)」 を作るということです。「情報」 のなかの記号 (ことば) と モデル (正規形として充足される 「真とされる値」) とのあいだでは、「1-対-1」 の対応関係が成立します (これを 「意味の対象説」 と云います)。管理資料のなかで記述されている モノ (事象・事物) を コンピュータ 向けに変換するのが モデル の役割です。 □

 




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