2023年 1月 1日 「2.2 論理的構造を作るための基礎資料...」 を読む >> 目次に もどる


 「論理的構造を作るための基礎資料は、『情報 (文字列)』 である」 ということを言うと、業務分析や要件定義を好む (あるいは、実際におこなっている) SE は反感を抱くことが多いようです (苦笑)──彼ら曰く、「実際の業務を観なければ、実態がわからない」 と。事業の実態を把握することを私は 勿論 大賛成です──TM では、そのことを F-真として重視しています。実態を把握することを反対する理由などあろうはずもない。

 しかし、本節で述べているように、たとえば、受注活動そのものを直示 (直接に指示) することはできないでしょう。なぜなら、受注という単語と現実的事態そのものには、直接的な指示関係は成立しないからです。その直示できない [ すなわち、その行為の範囲が定まらない ] 受注活動を SE が いったい どのようにして観ることができるというのかしら。企業がどのような活動を 「受注」 とみなしているかは、受注伝票に記述されています。受注伝票は、「受注」 という取引の証跡です。かくかくの受注行為は、しかじかの日時になされた取引であるということが記述されています。

 もし、SE が受注活動を観て その活動を記述したならば──私は、そんな夢物語を いっさい 信用していないのですが──、記述された受注活動は 「言語 (ことば)」 で表現されているでしょう。われわれは、「言語 (ことば)」 を抜きにして思考することなどできないでしょう。SE が自らの個人的価値判断に頼って 「言語 (ことば)」 を使って記述した文は、それはそれで ひとつの 「情報 (文字列)」 です。ただ、その 「情報 (文字列)」 の信憑性が疑わしい、と私は言っているだけです。

 或る事業においては、「色」 や 「寸法」 などが事業のなかで「主題 (キー・ファクター)」になっていることがある。しかし、「色」 や 「寸法」 は、(物体に帰属している属性 (特徴・性質) であって) 実際の業務を観ても 「単独で」 存在している訳ではない──しかし、それらは事業を営むうえで、事業を左右する 「主題 (キー・ファクター)」 です。SE が実際の現場を観て事業の実態として それらを観ることができるのかしら、、、。

 前節 2.1 でも記述しましたが、事業では、「管理」 のない 「取引」 も、「取引」 のない 「管理」 もありません。情報 システム というのは、「管理」 を効果的・効率的に実現するための システム です。そして、情報 システム を記述した モノ──言い替えれば、現実の事業過程を 「管理」 している写像 (形式的構造)──が モデル なのです。事業過程において、そこに関与している人たちが合意して、共有している 「事実」 を正確に写像したモノ (真とされる値) がモデルなのです。 □

 




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