200611

基準編-20 例題 ( ビジネス 解析──その 1

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2010121日 補遺

 

 

 T字形 ER図を読んで ビジネス を逆解析する例題として、基準編-20 と基準編-21 2編が綴られている。本編 (基準編-20) では、「『構造』 (entity relationship が示している事態) を、いかに読めば良いか」 に関して説明している。

 本編を綴った理由は、ER図が単なる 「お絵かき」 ではなくて、「ER図を観れば、ビジネス を逆解析できる」 ことを示すためであって、「ER図を、いかにして読むか」 という点を具体的に・詳細に示す意図はなかった。もし、「ER図を、いかにして読むか」 という点を主眼にするのであれば、具体的な例を、もっと数多く示さなければならない。

 本編の主眼は、あくまで、「構造が違えば、『意味』 が違う」 ことを示す点にあった。
 「正規化された データ (entity) を組み合わせて作られた構造は、事業過程を指示している」 ことを示すために本編を綴った。ただ、筆が走り過ぎて、本編の最後のほうで、以下のように綴っている。

    「戦略的な」 データベース 構築というのは、resource 群の 「造化の妙」 にある。そうでなければ、
    わざわざ、ER手法を使って 「お絵描き」 などしない方がいい。

 
 この記述は、あきらかに 「筆が走り過ぎている (overplay my hand)」。というのは、もし、そういうふうに主張するのであれば、「リレーションシップ の検証表」 を本編で示すべきである。 □

 



[ 補遺 ] 2010121日)

 T字形 ER手法は、「データベース 設計論──T字形 ER (関係 モデル と オブジェクト 指向の統合をめざして)」 (2005年出版) で──「赤本」 と愛称されている著作ですが──、「TM」 という名称に変更しました。そのために、その後、私は 「TM (T字形 ER手法の改良版)」 というふうに綴ることが多い。

 T字形 ER手法は、その呼称が示すように、「ER」 という語を使っているので、「黒本」 のなかで、「ER 図」 という言いかたを随所に使っていますが、(「赤本」 以後、) TM は、「ER 図」 ではなくて、「有向 グラフ」 であるという言いかたに改めています。というのは、T字形 ER手法は、そもそも、P. チェン 流の ER モデル ではないのですが──チェン ER モデル を 「モデル」 ということに私は反対なので──、「黒本」 のなかで 「ER」 という語を多用したがために、世間では、T字形 ER手法が まるで チェン ER モデル の変形のように思い違いされてしまったようです。T字形 ER手法の源流は、コッド 関係 モデル です。

 では、私は どうして ER という言いかたを使ったのかと言えば、コッド 関係 モデル の中核である 「関係 モデル」 すなわち 「関数」 に対して、「(項の) 並び」 を論点して、entity を 「event」 と 「resource」 の 2つの クラス に類別したので──関係の対称性・非対称性を強く意識して、「関数 (直積集合)」 を そのまま適用することを嫌ったので──「関数」 という ことば を使わないようにしたがためです。実際、当時、私は、ユーザ に対して、「T字形 ER手法のなかで 『関数』 という語を使わないでください」 とさえ言っていました。

 TM は、「論考」 「赤本」 そして 「いざない」 という一連の著作のなかで、数学 (数学基礎論)・言語哲学の観点から検討されて──「関係の対称性・非対称性」 は 「並び (半順序・全順序)」 の観点から検討されて──、TM の 「関係の文法」を (1点を除いて、) 「関数」 として扱ってもいいと判断できたので、最近では、TM の説明のなかで、寧ろ 「関数」 という語を多用しています。そして、TM の文法で構成された図を 「有向 グラフ」 であるというふうに言うようになっています。だから、今では、「ER 図」 と言われることを嫌っています。

 「ER 図」 という言いかたをしないで 「有向 グラフ」 という言いかたに変えた最大の理由は、「箱 (entity) ではなくて、線 (relation) を観よ」 ということを指導するためです。「ER 図」 を好む人たちは、「箱 (entity)」 に対して注意を注ぐようですが、「箱」 が 「意味」 を持つのは、文脈──すなわち、「線」──のなかであって、文脈のなかの ポジション (座標) が注視されなければならない。そして、「線」 を読むということこそが 「事業を読む」 ということです。

 「黒本」 の本編 (基準編-20) では、いまだ、「ER 図」 のように、「箱」 に対して重きを置いて、「線」 は 「箱」 のあいだで二次的に構成されるような説明の しかた になっています。本来は、逆に考えるべきです。すなわち、「線」 のなかで 「箱」 が置かれていて、それらの 「線」 を読むことが 「事業を読む」 ことだ、と。幸い、本編でも、「構造」 を重視しているので、「並び」 を論点にしない ER図に較べれば マシ でしょうね。







 

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