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2011年 4月16日 補遺  


 本節を、いま、読み返してみて、ずいぶんと粗い論理展開だと思う (苦笑)。

 まず、本節では、対照表は DOA (Data-Oriented Approach) であるという前提に立っているが、その前提自体が疑わしい。本 ホームページ のなかで、いくどか綴ってきたが、「TM (T字形 ER法の改良版) は、DOA であるといえば、そうでもあるし、DOA でないといえば、そうでもある」。DOA を 「データ の独自性 (data independence)」 という意味で使えば──「データ の独自性」 を データベース・パラダイム の立脚点だとすれば──、たしかに、TM は DOA と云うことができるが、データベース・パラダイム のなかで、データ 構造を考える際に、「データ 正規形」 を どのように考えるか 次第では、TM は DOA の枠組みを超えている。その 「データ 正規形」 を どのように考えるか 次第という論点が 「対照表」 である。

 データベース・パラダイム として、以下がある。

 (1) 概念設計 (意味 データモデル
 (2) 関係 データベース (セット・アット・ア・タイム 法
 (3) ネットワーク・データベース (レコード・アット・ア・タイム 法

 
 関係 データベース (Relational Data Base、RDB と略称される) では、コッド 関係 モデル が提示した データ 正規形が標準とされている──それが、第三正規形であっても第五正規形であっても、ここでは論点にしないが [ 第四正規形は ファギン 氏が示し、第五正規形は ウルマン 氏が示した ]。コッド 正規形の観点からみれば、TM の 「対照表」 は非正規形とされる。しかし、TM は、TM として、正規形を持っている。TM は、主選言標準形を正規形としている。その主選言標準形の具体的な構成を 「対照表」 として記述している。この点については、本 ホームページ のなかで、いくども綴ってきたので、ここでは割愛する。

 さて、本節を、いま、読み返してみて、TM が 意味論の観点に立って (関係主義に対して、) 実体主義を帯びていることを示す以下の文に気づいた。

    「請求がなければ、口座は存在しないのか」 という点を考えてみればいい。逆である。「口座が存在するから、
    (口座決済の) 請求を扱うことができる」 のである。

    「存在」 の有り方 (view) はさまざまであるが、「存在」 (entity) そのものは 1つである。これを表現する技法が
     ER 手法である。

 これらの文と 128ページに認 (したた) めた──ただし、( ) 書きだったのだが──「E.F. Codd 氏 対 P. Chen 氏 (セット概念 対 「entity」 概念) を吟味しながら」 という文が、世間では、「TMが 、まるで、P. Chen 氏の ER 手法を前提にしているような思い違いを生んだ」 ようである。
 私 (佐藤正美) は、129ページで、以下のように、はっきりと記述している。

    E.F. Codd 氏の 「セット理論」 および P. Chen 氏の 「ER 概念」 のいずれをも、「T字形 ER手法」 は根拠に
    していない。

 TM (T字形 ER手法) が底本にしたのは、ウィトゲンシュタイン 氏の哲学である。かれの哲学を前提にして、主選言標準形 (真理値表) として 「対照表」 が生まれた。ウィトゲンシュタイン 氏の哲学は、数学の 「関係主義」 に比べて、やや、実体主義の性質を帯びている。その性質が TM にも継承されている。

 ただ、本書 「黒本」 を執筆した時点では、「対照表」 に関して、意味論上、上述した以上の検討をしていない。そのために、本節でも、対照表は、どちらかと言えば、(「存在 (entity)」 を前提にして、) 構文論の観点で語られている。

 本節で示されている 「銀行. 預金種別. 口座. 対照表」 は、意味論上、「resource」 として扱うべきかどうかという論点として、「赤本」 (2005年出版、「データベース 設計論──T字形 ER 〜関係 モデル と オブジェクト 指向の統合をめざして 〜」) の最終 ページ に示されることになった──その ページ では、この対照表そのものではなくて、「銀行. 支店. 対照表」 として示されている。

 「銀行. 預金種別. 口座. 対照表」 が、構文論上、「resource」 的な文法を適用されることを示さなければ、本節で示した 「請求 (以下の構成を示す請求)」 が view にすぎないことを断言することはできない。その点では、本 エッセー のはじめに記述したように、本節の論理展開は粗すぎると思う。

  {請求番号、顧客番号 (R)、銀行 コード (R)、預金種別 コード、口座番号、請求日、請求金額 (D)}.

 



[ 補遺 ] (2011年 4月16日)

 取り立てて補足説明はいらないでしょう。
 一言付け加えれば、ここ数年のあいだ、「TM は DOA ではない」 と私は公に宣言してきています。







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