2019年 3月 1日 「2.1 集合」 を読む >> 目次に もどる


 本節では、「集合」 の基礎概念・基礎演算を述べています。「集合」 とは、次の二つの条件を満たす モノ の集まりのことを云います (集合論を作った カントール の示した定義)。

 (1) 或る モノ がその集合に入っているかどうか見分けることができる。

 (2) その集合から二つの モノ を取り出すと、それらが相等しいか相異なるのかを判断できる。

 普段の生活において モノ の集まりを考えるときには──ここでいう モノ は実在するものだけではなくて、頭の中で考えた抽象的なものもふくんでいます──、上記の定義で問題はないのですが、「無限」 を前提にした場合には (数学上では) 厄介な問題が出てきました。それが いわゆる 「集合論の パラドックス」 という問題です──「集合の集合」 全体を考える場合に、「じぶん自身をふくむ集合」 の扱いが問題になりました。この パラドックス には、構文論上の パラドックス と意味論上の パラドックスがあります。数学で扱う 「集合」 ですから、勿論、構文論上の パラドックス が数学者たちの対象になった (その詳細は、「いざない」 を読んでください)。そして、パラドックス を避けるために導入された ソリューション (安全基準) が次の 2つです──

 (1) 公理的集合論 (ツェルメロ が提示した)
 (2) タイプ 理論 (ラッセル が提示した)

 これらの ソリューション の詳細については後章で述べます。本節では、これらの ソリューション が どのような背景で生まれてきたのかを述べています。ここで覚えてほしいことは、「すべての集合の集合」 を 「集合」 とはいえなくなったことで、ツェルメロ が導入した安全基準である 「分出公理」(あるいは、「部分集合の公理」 とも云う) です──すなわち、{ x │ x ∈ A } ということの代わりに、{ A (x)│ x ∈ a } の形 (a という部分集合を考えること) を 「集合」 としました。もう一つの集合 (集合 a) を仲立ちにして 「すべての集合の集合」 を一気に考えないように [ つまり、集合 a よりも小さい集合を考えるように ] しました。この点を覚えておいてください──この公理 [ 仮定、前提 ] が公理的集合論の基点です。

 しかし、「分出公理」 は 「無限」 を扱うことができない。そこで、ツェルメロ は、自然数全体 (「後続」(延長) の無限) を集合とする公理など いくつかの公理を立てて 「公理系」 として、集合の構成法を示しました──これが公理的集合論です。公理的集合論が現れて以後、「集合」 の構成法は完全に記号演算となって、厳密な構文論上の扱いとなりました。公理的集合論に対して、カントール が作った集合論のことを素朴集合論と云います。 □

 




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