2020年 5月 1日 「6.1.3 連言・選言・仮言の法則」 を読む >> 目次に もどる


 「全称」 および 「存在」 を命題の 「量 (quantity)」 と云い、「肯定」 および 「否定」 を命題の 「質 (quality)」 と云います。命題とは 『判断』 の叙述文」 のことを云い──命令・感嘆・願望・意志をあらわす文は命題ではない──、「判断」 とは真 (true) あるいは偽 (fault) である性質をもつ言語的形象を云うので、「すべての」 命題は 「量と質」 をもっています。

 ロジック は思考の成立を扱わないで、思考の過程を扱います。そして、思考の過程は言語 (記号列) を使って表現されるので、ロジック は言語の分析を扱います。言語の分析には、「構文論」 と 「意味論」 があります。「構文論」 は、記号のあいだに成立する関係を扱い、言語の構造を分析します──すなわち、命題の 「量」 を扱います。「意味論」 は、記号と対象 (言語化される以前の対象) の両方を扱い、命題の真・偽に関する判断を分析します──すなわち、命題の 「質」 を扱います。

 本節では、命題の 「量」 と 「質」 を次の 3つの観点から記述しました。

   (1) 自然言語
   (2) 論理式
   (3) 集合論 (ベン 図)

 自然言語の命題として、次の 4つを示しています。

   (1) すべての S は P である。
   (2) すべての S は P でない。
   (3) 或る S は P である。
   (4) 或る S は P でない。

 これらの命題を論理式で記述すれば、次のようになります。

   (1) ∀x(S(x)⇒ P(x)).
   (2) ∀x(S(x)⇒ ¬P(x)).
   (3) ∃x(S(x)∧ P(x)).
   (4) ∃x(S(x)∧ ¬P(x)).

 これらの論理式を ベン 図であらわせば、「いざない」 p. 144 に記載されている図になります。

 自然言語で記述された 「『判断』 の叙述文」 は、論理式で表現できて、論理式は集合に翻訳できるということを意識してください。

 上述した論理式において、ド・モルガン の法則を適用して、連言・選言・仮言を使った同値式は それぞれ 次のようになります──仮言命題 p ⇒ q は、¬p ∨ q と同値であることを思い出してください

   (1) ¬{∃xS(x)∧ ¬P(x)}.
   (2) ¬{∃xS(x)∧ P(x)}.
   (3) ∃x{¬P(x)⇒ S(x)}.
   (4) ∃x{P(x)⇒ S(x)}.

 この同値式を ベン 図を使って確認することは難しいでしょう (笑)──学校では集合を習うときに、ベン 図を使って集合の基本演算を習いますが、ベン 図を書くのが ロジック の学習ではない。だから、論理式の演算に慣れてください。たとえば、(1) は次のように変換されます。

   ∀x(S(x)⇒ P(x))≡ ∀x(¬S(x)∨ P(x))≡ ∀x¬S(x)∨ P(x))≡ ¬{∃xS(x)∧ ¬P(x)}.

 同じように、(2)(3) および (4) も同値式を作ることができます。 □

 




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