2021年 5月15日 「10.2 完全性と健全性」 を読む >> 目次に もどる


 「完全性」 と 「健全性」 を説明する前に、前回の 「10.1 恒真、恒偽、充足的」 で述べた次の二つの用語 (「恒真」 と 「証明可能性」) を思い出してください──

  (1) 意味論的な恒真 (トートロジー) を ⊩ で表す。

  (2) 構文論的な証明可能性を ⊢ で表す。

 それらの二つの記号を使って、「完全性定理」 を次のように簡単に記述できます──

    T ⊢ ψ ⇄ T ⊩ ψ.

 ⊩ ψ というのは 「ψ は恒真である」 という意味で、述語論理の形式的体系 を T で表せば T ⊢ ψ は 「A は T で証明可能である」 ということを意味です。上記の 「完全性定理」 は次の二つの論理式に分けることができます──

  (1) T ⊢ ψ → T ⊩ ψ. (構文論的に証明できる命題は、意味論的に成り立つ。)

  (2) T ⊩ ψ → T ⊢ ψ. (意味論的に成り立つ命題は、構文論的に証明できる。)

 前者を論理体系の 「健全性 (soundness)」 と云い、後者を論理体系の 「完全性 (completeness)」 と云います。

 「論理的」 というのは──たとえば、「ゆえに、・・・ということが論理的に帰結する」 というように──、「健全性」 と 「完全性」 が満たされていることを云います。すなわち、「構文論的な帰結」 と 「意味論的な帰結」 が外延的に一致する。なお、「健全性」 と 「完全性」 をいっしょにして、単に 「完全性」 ということが多い──まさに、「完全性定理」 という言いかたが その例でしょう、第一階述語論理は この 「完全性」 を満たしていることを証明したのが 「完全性定理」 です。 □

 




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