2021年 6月 1日 「10.3 モデルの存在性」 を読む >> 目次に もどる


 モデル というのは、簡単に言えば、「現実的事態の写像」 です──「写像」 というのは、集合 S1 の任意な元に集合 S2 の一つの元を対応させる法則 f のことで、S1 から S2 への写像といい、f : S1 → S2 と記述します。なお、写像のことを 「変換」 とか 「関数」 ということもあります。

 f によって x ∈ S1 が y ∈ S2 に対応するならば、y は x よる 「像」 であるといい、f (x) = y と記述します。「現実的事態」 というのは、以前にも述べましたが 「現実 (事実)」 そのものではなくて 「現実 (事実)」 を記号化した 「情報 (記号群、文字列)」 のことを云い、これを S1 とすれば、形式的構造が S2 に相応します──そして、S1 の元 x から S2 の元 y への 「関数」 (全単射) が 「『健全性・完全性を実現した論理規則』 を使って作られた一つの公理系」 (たとえば、モデル TM) です。ゆえに、モデル は形式的構成物 (言い替えれば、論理的構成物) をつくる公理系のことです。

 以上の説明を数学的に記述すれば──

    Σ を述語論理 T の文の集合として、T が Σ の任意の文 ψ について、T ⊩ ψ (すなわち、
    トートロジー) であるような 「解釈」 が成立するならば、T は Σ の 「モデル」 である。
    ただし、Σ は自由変項をふくまない文の集合とする。

 そして、「モデル」 の考えかたを整えた人物が レーヴェンハイム 氏と スコーレム 氏です。

 この考えかたを事業分析・データ 設計の領域へ適用すれば、「情報 (文字列)」 を形式的構造へ対応する全単射の f (公理系、モデル) があって、その モデル から生成された形式的構造 (文の集合) は次の 2点を満たしていなければならない、ということです──

    (1) 構文論的に証明できる。

    (2) 意味論的に成り立つ。

 すなわち、構文論的に無矛盾であって──健全性を実現していて──、意味論的に 「『真とされる』 値」が充足されていて その構造が 「現実の」 事業構造と一致していなければならない、ということ。数学では 「形式的構造が『現実の』 事業構造と一致している」 ということは問われていない、この真理条件(*)は事業分析を目的にする モデル に特有の要件 (文の集合が 「真」 とされるための 「解釈」) です──事業分析を目的とする モデル では、事業構造を明らかにするのが役目なのだから。

 
(*) 真理条件とは、タルスキー 氏が 「真理の対応説」 と 「2値論理」 を使って、「真」 概念として導入した次の定義構造です──

    定義 (T): 'p' が真であるのは、p のときに限る。

 たとえば、──

    文 「雪は白い」 が真であるのは、雪は白いときに限る。

 




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