思想の花びら 2020年 5月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  世には上すべりの懐疑がある、不安にすぎぬ。そういう心がけで本を読んではならぬ。ジャン・ジャック がしたように、愛と信念とでもって疑いたまえ。まじめに疑いたまえ、悲し気に疑うな。(略) まじめということについては、いろいろ言うことがありそうだ、悲しげな顔をすることはむずかしいことではないからだ。それは坂を下るようなものだ。しかし、幸福になることは困難な美しい仕事だからだ。常に、さまざまな説明に負けぬ強い人間でいたまえ。諸君を襲撃するいろいろな思想は、とくに諸君が武器を取りに走るようでは、少しも有益なものではない。そういうときに ソクラテス は笑ったのだ。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  熟練性こそ教養だと言ひたいのである。またそこにこそ道徳の基礎があると思つてゐる。道徳とは文字どほり道の徳である。道とは一つの職業に熟練した人の道であつて、さういふ人は道徳をあらはに説かずとも、おのづからにして道徳家ではないか。私はさう考へてゐる。そして一つの道に精通するとは、その道に関する知的努力の極限を示すことであつて、かゝる累積が彼の人格を磨き、在るがまゝのすがたで、何か底光りを発してゐる。(略) 生産者あるひは創造者としての苦しみの汗からにじみ出たものが教養だと私は思ふ。

 


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