思想の花びら 2021年 5月15日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  最大の不幸はおそらく正義は権力によってできあがるというところにある、人は、ために、正義をにくみ、悪を愛するに至るからだ。しかし、この事情には、たちのよくない混同があるだけだ。つまり、思想はあくまでも法を信じてゆずらない、一方肉体は肉体で行為を要求する、この二つのものの混同だ、そう考えれば、この不幸にやみに、どうやら微光がさすのであって、怒りが思索の務めを明かすこともある。正義の復讐の成るまえに眠ってはならぬ、と感情は言うが、じつはまず眠らなければいけないのだ。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  私は多面的に色々のものを摂取してきた。文学を学ぶことは人生を学ぶことであり、人生いかに生くべきかを問ふことであり、その意味は決して単純ではない (略)。そして与へられた時代の苦しみと人生の苦しみを、まともに背負つて、よろめきながらも生きてゆきたいと思つてゐるのである。
  現代は云ふまでもなく、日本にとつて大へんな苦難の時代である。かういふ時代には過去のものは美しくうらやましくみえるものである。しかし過去の芸術家も宗教人も、やはりその時代の苦悩はまともに背負つて生きたわけで、時代苦や人生苦を味ふ点では変わらなかつたであらう。人一倍感じやすい人々にとつて、楽な環境などある筈はない。どんな時代、どんな環境にめぐまれても、与へられただけのものには不満を感じ、それに抵抗し、孤独において仕事を残したのである。

 


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