2009年 6月16日 「技術編-30 みなし概念」 を読む >> 目次にもどる

 

 TM は、「情報 (帳票、画面など)」 を対象にして、以下の手続きで、事業過程・管理過程を モデル 化します。

  (1) 個体 (entity) を認知する。
  (2) 関係の性質を判断する (entity を 「event」 と 「resource」 に分割する)。
  (3) 個体に関係文法を適用して 「構造」 を作る。
  (4) 個体の分割・細分を検証する。
  (5) 「多値」 を排除する。

 個体 (entity) に対して、関係文法を適用して 「L-真」 の文を構成します。そして、「L-真」 の文は、「F-真」 を験証されます。すなわち、モデル の構成要件 (正当化条件および真理条件) を、TM は、以下のように構成しています。

  同意された語い → L-真の構成 → F-真の験証

 「同意された語い」 の中から個体を認知するときに、TM は、以下の判断規則を適用しています。言い換えれば、TM は、個体を以下のように定義しています。

  個体である = Df 個体指定子を付与された管理対象である。

 そして、個体は、「event (正確には、case)」 と 「resource (正確には、subject)」 の ふたつに分割されます。それぞれの定義は以下のとおり。

  「event」 である = Df 性質として 「日付」 が帰属する entity である。

  「resource」 である = Df 「event」 以外の entity である。

 個体そのものの認知は、個体指定子 (コード 体系のなかに定義されている管理番号) を使えばいいのですが、争点になるのは、「個体に帰属する」 性質です。言い換えれば、どういう判断規則で、しかじかの性質が かくかくの個体に帰属すると判断するのかという点が争点になります。この判断規則は、「観察可能な特徴」 を観るしかないでしょうね [ 「理論編-3」 を参照されたい ]──すなわち、曖昧な (常識的な ?) 判断しかない。アリストテレス風に云えば、「実体述定」 という やりかた です。アリストテレス は、「実体」 を以下の 2つに分類しています。

  (1) 第一実体
  (2) 第二実体

 「第一実体」 とは、「任意のひと」 のように個体に適用される概念で、「第二実体」 とは、「ひと」 のように類種 (クラス 概念) に適用される概念です。そして、たとえば、「この緑色の モノ は、葉である」 という文に対して、「葉は、緑色である」 というふうに、実体が主語になっていて、その実体が 「何であるか」 を記述する述語を 「本質述定」 と云い、実体以外の カテゴリー に属する性質が記述されていれば 「付帯性」 の記述であると云います。

 しかし、「本質述定」 を定義しようとすれば、無限後退に陥るでしょう。たとえば、「鳥は、飛ぶ」 という文について、「飛ぶ」 というのは、どういう状態を云うのかを定義しようとしても、ペンギン などの例外もあるし、どのくらいの高さで どのくらいの滞空時間であれば 「飛ぶ」 ことになるのかは定義できないでしょう。というのは、もし、仮に、1分間の滞空時間を 「飛ぶ」 という定義にすれば、59秒は 「飛ぶ」 ことにならないのかという疑問がでるでしょうね。すなわち、「近傍」 は──少しずつ近づけることもできるし、少しずつ離れることもできるので──対象にならないのかという争点がでてくるでしょう。この点が 「性質の帰属性」 を定義できない原因でしょうね。したがって、もし、「実体」 という観点で 「性質」 を判断するのであれば、「近傍」 をふくめて、「観察可能な特徴」 として常識的に判断するしかないでしょう。

 もう一つの やりかた としては、「性質」 そのものを定義しないで、しかじかの 「性質」 を使って かくかくの 「集合 (セット でも クラス でもいい)」 を作ることができるというふうに考えることもできます。すなわち、個体を変数として扱って、クラス を 「性質」 に近い概念として翻訳してしまう やりかた です。この やりかた は、数学の 「集合論」 の やりかた です。

 TM は、個体指定子を使って個体を認知しているので、個体を認知したあとで 「性質 (観察述語)」 を個体に割り振る やりかた をとることになります。したがって、どちらかと云えば、アリストテレス 風の やりかた に近い。勿論、逆の 「解釈」 もできるのであって、しかじかの 「性質」 を集めれば、かくかくの (個体指定子を付与された) 個体を ひとつの集合として作ることができる、と。いずれにしても、「性質の帰属性」 は、曖昧な概念です。たとえば、以下を例にして説明します。

  { 従業員番号、従業員名称、・・・、入社日 }.

 ここで争点になるのは、「入社日」 が 「従業員」 に帰属する性質かどうかという点です。この点については、本 ホームページ の 33ページ・ 324ページ で説明しているので、参照してください。

 数学的には、「関数従属性」 の観点において、「入社日」 は 「従業員」 という集合を構成するとして良いのですが、TM では、「日付」 は、「event」 に帰属する性質とされているので、「入社日」 は 「入社」 という できごと に帰属する性質として判断されます。しかし、「入社」 という できごと が entity として認知されるためには、「入社番号 (あるいは、入社 コード)」 のような個体指定子が付与されていなければならないのですが、コード 体系のなかに、その個体指定子を定義していることは、(多くの企業の入社式を催事として運営することを委託されている催事会社を除いて) まず ないでしょう。したがって、「入社日」 を収録するはずの 「入社」 entity が存在しない。でも、「入社日」 は、TM の定義によって、「従業員」 に帰属する性質ではない。そこで、個体指定子が付与されていない場合であっても、個体 (entity) として認知する手段が 「みなし entity」 です。したがって、前述した 「従業員」 関連の性質は、以下のような構成となります。

  { 従業員番号、従業員名称、・・・}.

  { 従業員番号 (R)、入社日 }.

 「入社」 entity を構成する個体指定子が定義されていないので、「従業員番号」 を代用します。すなわち、「入社」 を entity と 「みなす」 やりかた です。「みなし entity」 の構成法については、次回以降 説明します。

 さらに、アリストテレス の云う 「第二実体」──現代風に云えば、クラス──を 「みなし スーパーセット」 (あるいは、「概念的 スーパーセット」) として構成することもあります。「みなし スーパーセット」 についても、次回以降 説明します。

 「みなし entity」 および 「みなし スーパーセット」 を総称して 「みなし 概念」 と云います。
 ただし、これらの 「みなし概念」 は、TM の体系のなかには入れていない点に注意してください。すなわち、TM の文法に従って構成された文に対して、さらに、「意味論」 (現実的事態に対する 「解釈」) を強く適用したのが 「みなし概念」 です。そのために、「みなし概念」 は、TM と べつの体系にして、TM’ (「TM プライム」 あるいは 「TM ダッシュ」 と発音します) と しています。 □

 



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