2009年 7月 1日 「技術編-31 みなし entity」 を読む >> 目次にもどる

 

 TM では、entity は、以下のように定義されています。

  entity である = Df 個体指定子を付与された対象である。

 「みなし entity」 とは、個体指定子を付与されていないにもかかわらず、ひとつの個体としてみなされた対象を云います。前回述べたように、「みなし概念」 は、TM の文法のなかには入れていない──すなわち、「同意された語彙 → L-真の構成 → F-真の験証」 という手続きのなかで、文法に従って構成される個体ではないということ。したがって、「みなし entity」 に対しては、TM の文法を適用しない。「みなし entity」 は、「F-真」 の験証のなかで構成される概念です。

 上述したように、「みなし entity」 を構成する文法がないので──言い換えれば、文法に従って構成された個体に対して 「F-真」 を験証するときに、その個体に帰属しないと判断される性質を その個体から除去して ほかの entity として構成する概念なので──、個体の 「F-真」 を どのように 「解釈」 するかによって、「みなし entity」 は構成されることもあれば構成されないこともあります [ つまり、個体を 「解釈」 するひとの判断に依存します ]。たとえば、以下の例を考えてみましょう。

 (1) 「会社」 entity

  { 会社 コード、会社名称、資本金、・・・ }.

 「会社」 entity において、「資本金」 は 「会社」 に帰属する性質かどうか という点が争点になります。「会社」 を設立するためには 「資本金」 は a must なので、「資本金」 は 「会社」 に対する本質述定の一つであるという 「解釈」 もできますし、いっぽうで、多くの会社と取引している場合には、それぞれの会社に対する 「与信」 を判断する項目の一つであるとも 「解釈」 できます。もし、「与信」 の項目であると 「解釈」 すれば、以下のように、「みなし entity」 を構成するでしょう。

 (2) 「会社」 entity と、その 「みなし entity」

  { 会社 コード、会社名称、・・・ }. [ 会社 entity ]

  { 会社 コード (R)、資本金 }. [ 会社. 与信 ]

 では、(1) と (2) のどちらが 「正しい解釈」 なのか は、文脈 [ 構成全体 ] のなかでしか判断できないでしょう──言い換えれば、「会社」 そのものを対象にして判断できないということ。ことさように、「みなし entity」 を構成するのは難しい。逆に言えば、TMD を観るときに、「みなし entity」 を確認すれば、事業を どのように 「解釈」 しているか がわかるということ。TM を構文論の テクニック だとすれば、それを意味論的に整えること [ 意味論的な添削 ] が 「みなし概念」 であると云ってもいいでしょう。 □

 



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