2001年 4月30日 コード以外の identifier >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   identifier として、○○コード (あるいは○○番号) 以外を使うことはあるか。
  ▼ ANSWER   ある。 略称や区分コードも identifier になる。
2006年 6月 1日 補遺  


 例えば、「名称」 や 「区分コード」 が identifier として機能することがある。



(1) 「名称」 の具体例 (「名称」 が identifier 扱い)

 ┌─────────────────┐
 │       商 品      R│
 ├────────┬────────┤
 │商品略称    │商品名称    │
 │        │        │
 │        │        │
 │        │        │
 │        │        │
 └────────┴────────┘


前提:

商品 略称は、商品名称を 「簡略化」 した名称である。

1つの商品略称には、1つの商品名称が対応している。

商品コ ードは、コード体系のなかに記述されていない。

したがって、商品略称が、商品を認知するための手段として使われて いる。




(2) 「区分コード」 の具体例 (「区分コード」 が 「分類コード」 として機能している。)

 ┌───────────────────────┐
 │          取引先         R│
 ├───────────┬───────────┤
 │取引先コード     │取引先名称      │
 │           │住所コード(R)   │
 │           │番地         │
 │           │           │
 │           │           │
 └───────────┴───────────┘

 ┌───────────────────────┐
 │     取引先. 取引先区分. 対照表     │
 ├───────────┬───────────┤
 │取引先コード(R)  │           │
 │取引先区分コード(R)│           │
 │           │           │
 └───────────┴───────────┘

 ┌───────────────────────┐
 │         取引先区分        R│
 ├───────────┬───────────┤
 │取引先区分コード(R)│           │
 │           │           │
 └───────────┴───────────┘


前提:

取引先区分コードは、例えば、以下の内訳とする。出荷先、 支払先、納入先、などなど。

1つの取引先には、複数の 「区分」 が並立する。
  例えば、取引先 A 社は、出荷先で もあり、支払先でもあり、納入先でもある。
  つまり、区分コードのなかで、2つ以上の区分が 「AND」 (連言)として 成立する。

したがって、「取引先区分コード」 は、サブセットではない。
  すなわち、取引先の 「部分集合」 にはならない。

「取引先区分コード」 は、「区分コード」 として記述されているが、「分類コード」 として機能している。



[ 補遺 ] (2006年 6月 1日)

 このエッセーを綴ったときには、いまだ、identifier に対して 「的確な」 訳語を思い浮かばなかったので、英語の identifier を そのまま使っていました。ER 手法では--TM (T字形 ER手法) に限らず--、一般に、entity を示す個体番号として identifier という用語を使います。
 TM (T字形 ER手法) では、2003年頃から、identifier に対して、「認知番号」 という訳語を使うようになりました。identifier の訳語として、「識別子」 という語もあるのですが、TM が重視した点は、entity の認知に関して、「合意された」 認知という点です。

 事業過程を対象にすれば、「合意された」 認知を示す典型的な手段が いわゆる 「コード体系」 です。コード体系のなかに定義された (個体を認知する) 番号・コードを--たとえば、従業員番号とか商品番号とか取引先コードとか--使って、事業過程のなかで情報が伝達されています。
 したがって、事業過程 (正確には、管理過程) の現状を記述するためには、まず、コード体系を資料にして、「合意されている」 個体を記述すればよいでしょう。

 「認知番号」 というのは、個体に対して 「合意された」 認知を示す記号という意味であって、つねに、○○番号・××コードでなければならないという意味ではない点に注意して下さい。
 ○○番号・××コードのほかにも、「合意された」 認知を示す個体指示子であれば、認知番号として使うことができます。その典型的な例が上述した (1) の例です。

 (2) の例は、個体指示子を前提にして、個体が個体であることを破らない点を示しています。すなわち、1つの セット (set、集合) のなかで、部分集合 (サブセット) を生成する際に、「交わり (論理積)」 が生じてはいけないことを示しています。TM (T字形 ER手法) は、「合意」 の認知を重視していますので、1つの集合を区分する際にも、コード体系のなかに記述されている管理区分 (区分コード) を前提にしていますが、区分は、1つの集合のなかを 「仕切る」 だけなので--数学的に言えば、セットとサブセットは 「同値類」 なので--、個体の 「交わり」 を認めません。したがって、もし、区分コードを使って生成したサブセットのあいだで 「交わり」 があるのなら、区分コードが1つのセットを区分する記号として作用していないことになります。そのために、「交わり」 を生じる区分コードは、そのセットのなかにあってはいけないことになります。したがって、そういう区分コードを entity から除去して、単独の 「分類コード」 として扱います。

 なお、1つの entity のなかで区分コードが 「交わり」 を起こしても、「交わり」 に対して、1つの値を付与していれば、サブセットとして作用するので、区分コードを当然ながら除去しなくてもよいでしょう。たとえば、取引先区分コードに対して、出荷先 (その値を、たとえば、 「1」 としましょう) と納入先 (その値を、たとえば、 「2」 としましょう) の2つがあるとして、もし、「出荷先かつ納入先」 に対して、区分コードの値として 「3」 を付与していれば、「交わり」 にはならない点に注意して下さい。

 「区分」 と 「分類」 は、現象的には、同じになりますが、TM (T字形 ER手法) では、個体指示子 (認知番号) を起点にして、個体として認知されている集合の上位階 (クラス) を作ることを 「分類」 といい、個体として認知されている集合の下位階 (サブセット) を作ることを 「区分」 としています。




  << もどる HOME すすむ >>
  データ解析に関するFAQ