2001年 7月29日 「event」 の並び >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   「event」 を時系列のなかで 「並べる」 ことには意味があるのか。
  ▼ ANSWER   ある。 「並び」 とは、数学上、「< (小さい)、= (等しい)、> (大きい)」 の 3つをいう。
2006年 9月 1日 補遺  




 (1) 「event」 には、性質として 「DATE」 が帰属する。

 (2) 「DATE」 が判断規準に なるのであれば、「DATE」 を使った 「順序対」 として扱うことができる。

 (3) 「順序対」 には、以下の 3つの比較が成立す る。
   (3)-1 < (小さい)
   (3)-2 = (等しい)
   (3)-3 > (大きい)

 この 3つの比較 (<、=、>) は、「event」 を検証するためには大切な検証機能である。
 すなわち、「event」 と 「resource」 は、「トランサ゛クション・ファイル」 と 「マスター・ファイル」 というような言い換えではない。



1. 「event」 の順序対の具体例 (その 1)

 たとえば、以下の 2つの順序対を考える。

 (1) (出荷, 請求)
 (2) (請求, 出荷)

 (1) は出荷してから請求することを意味しているが、(2) は請求してから(たとえば、入金がなされたことを確認 してから) 出荷することを意味している。(1) と (2) では、「意味」 が、全然、ちがう。これに比べて、「resource 」 の順序対には大きな意味はない。例えば、(従業員, 部門) と (部門, 従業員) は、いずれも、「配属」 という意味を表現するので、同じ扱いとなる。



2. 「event」 の順序対の具体例 (その 2)

 たとえば、以下の順序対を考える。

 (1) R (受注, 出荷)
 (2) 受注と出荷の関係 (リレーションシッフ゜・タイフ゜) は 「1 対 1」 とする。
 (3) 受注 {受注番号、受注日、受注数}.
 (4) 出荷 {出荷番号、受注番号 (R)、出荷日、出荷数}.

 以上を、前提とすれば、当然ながら、受注数と出荷数の対応が論点となる。
 つまり、受注数を 「100個」 とすれば、出荷数は、以下の 3つの順序対の可能性が成立する。


受注数順序対出荷数
100120
100100
10080

 「100 < 120」 では、「出荷数の積増し」 が起こり、「100 > 80」 では、「注残」 が起こる。
 とすれば、「1 対 1」 の関係の なかで、「出荷数の積増し」 や 「注残」 が、どのようにして扱われているのか、という点を検証しなければならない。


[ 補遺 ] (2006年 9月 1日)

 TM (T字形 ER手法) の 「event」 の定義は、「トランザクション・ファイル」 というような言い換えではないし、「動詞形で記述される 『こと (事態)』」 であるというような曖昧な定義ではない。
 TM (T字形 ER手法) は、個体の指示規則 (意味論) と 関係の生成規則 (構文論) を配慮した モデル として作られていて、個体を 「『event』 と 『resource』」 として分類する際に、「関係の対称性・非対称性」 を考慮した規則を導入している。

 「関係の対称性」 とは、数学的に記述すれば、R (a, b) ≡ R (b, a) が成立する 「関係の性質」 をいう。たとえば、「恋人である」 という関係がそうである。すなわち、「恋人である (佐藤正美, 山崎恵美子)」--佐藤正美は山崎恵美子の恋人である、という関係--であっても、「恋人である (山崎恵美子, 佐藤正美)」--山崎恵美子は佐藤正美の恋人である、という関係--であっても、関係のなかの変数は 「並び」 が変わっても、関係の意味は変わらない。
 いっぽう、「関係の非対称性」 は、数学的に記述すれば、R (a, b) ≠ R (b, a) が性質する 「関係の性質」 をいう。たとえば、「父親である」 という関係がそうである。すなわち、「父親である (佐藤正美, 佐藤敦)」--佐藤正美は佐藤敦の父親である、という関係--と、「父親である (佐藤敦, 佐藤正美)」--佐藤敦は佐藤正美の父親である、という関係--では、関係の意味がちがう [ この例では、R (a, b) は 「真」 だが、R (b, a) は 「偽」 である ]。

 「関係の対称性・非対称性」 は、数学的には、「並び」 として論点になる。コッド 関係 モデル が 「半順序」 を記述できなかった点を TM は論点にしたのである。
 「関係の対称性・非対称性」 を事業過程の データ に適用すれば、たとえば、以下を示すことができる。

 (1) R (従業員, 部門) ≡ R (部門, 従業員). [ いずれも 「配属」 という意味を示す。]
 (2) R (出荷, 請求) ≠ R (請求, 出荷). [ 「前払い」 と 「後払い」 というふうに、意味がちがう。]

 (2) のように、関係のなかで非対称性を示す個体を 「event」 として TM は定義したのである。TM では、「event」 は、以下のように定義されている。

   event である = Df 性質として、日付が帰属する個体である。

 すなわち、TM は、「並び」 の規則として、事業過程のなかで起こる事態の時系列を導入している。
 そして、「並び」 は、数学的には、本 エッセー で述べたように、「>、=、<」 という性質を示す。




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