2001年 7月11日 サブセット と VE (その1) >> 目次 (作成日順)
  ● QUESTION   サブセット と VE の違いは、どのようにして判断すればよいか。
  ▼ ANSWER   「性質」 が帰属するなら、サブセット である。 VE は、べつの entity である。
2006年 8月16日 補遺  




    以下の規準を使えばよい。

    (1) 「性質」が帰属するなら、サブセット である。
    (2) 「性質」が帰属しないなら、VE (みなし entity) として扱う。

    「性質」が帰属するかどうかという判断は、以下の規準を使えばよい。
    「entity 名称. 性質」




▼ サブセットの具体例


             ┌─────────────────┐
             │       営業所      R│
             ├────────┬────────┤
             │営業所コード  │営業所名称   │
             │        │営業所区分コード│
             │        │特約店種別コード│
             │        │        │
             └────────┼────────┘
                      |
                      × 営業所区分コード
                      |
          ┌───────────┴───────────┐
          |                       |
 ┌────────┴────────┐     ┌────────┴────────┐
 │      海外営業所      │     │      国内営業所      │
 ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
 │営業所コード  │営業所名称   │     │営業所コード  │営業所名称   │
 │        │営業所区分コード│     │        │派出所区分コード│
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │         │        │
 └────────┴────────┘     └────────┼────────┘
                                  │
                       ┌───────────┘
                      │
                      = 派出所区分コード
                      |
          ┌───────────┴───────────┐
          |                       |
 ┌────────┴────────┐     ┌────────┴────────┐
 │       支 所       │     │       派出所       │
 ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
 │営業所コード  │営業所名称   │     │営業所コード  │営業所名称   │
 │        │営業所区分コード│     │        │営業所区分コード│
 │        │派出所区分コード│     │        │派出所区分コード│
 │        │        │     │        │        │
 │        │        │     │         │        │
 └────────┴────────┘     └────────┴────────┘


 サブセットは「部分集合」なのだから、「サブセット ⊂ セット」 が成立する。
 逆に言えば、以下のよう に、「is (...である)」が成立する。

 (1) 国内営業所は、営業所である。
 (2) 海外営業所は、営業所である。
 (3) 支所は、国内営業所である。
 (4) 派出所は、国内営業所である。




▼ VE の具体例

 ┌─────────────────┐     ┌───────────────────┐
 │       従業員      R│     │      従業員. 入社     VE│
 ├────────┬────────┤     ├─────────┬─────────┤
 │従業員番号   │従業員名称   │     │従業員番号(R) │入社日      │
 │        │        ├┼───┼┤         │         │
 │        │        │     │         │         │
 │        │        │     │         │         │
 │        │        │     │          │         │
 └────────┴────────┘     └─────────┴─────────┘

 入社日は、「入社. 日」であって、「従業員. 日」ではない。
 したがって、「入社日は、従業員である」という文も成立しない。


[ 補遺 ] (2006年 8月16日)

 まず、VE (Virtual Entity、みなし entity) は、TM の体系のなかには入れていない点に注意されたい。
 TM の体系は、以下の 5つから構成されている。

  (1) 個体の認知
  (2) 個体の性質・関係の性質
  (3) 関係の論理 aRb
  (4) データ の周延
  (5) データ の多値

 VE は、TM に対して、意味論を 「強く」 適用したときに生じる概念である。
 TM に対して、VE を加えた体系を TM’ と云う。従来 「T字形 ER手法」 と云っていた体系は、TM’ のことである。TM と TM’ という 2つの体系を導入した理由は、以下の点にある。

  (1) TM は、構文論を主体とした体系である。
  (2) TM に対して VE を増補した体系は、意味論を主体にした体系である。

 この体系は、以下のように、実地の データ 設計に対応する。

  (1) Tentative Modeling (構文論 [ 文法 ] に従って、「構造」 を作る)
  (2) Semantic Proofreading (「構造」 を意味論の観点に立って校正する)

 さて、TM に従って作られた 「構造」 に対して、VE を適用する際、VE は、以下の点を考慮して作られる。

    「そのもの-の」 性質かどうか。

 この判断は、「『一般手続き』 として提示することができない」 という弱点がある。
 たとえば、TM のなかで、個体を認知する際、認知番号を判断規準にして、認知番号に対応する述語を、たとえば、(コッド関係モデルが示したように、)「関数従属性」 に従って作ることができる。

    {従業員番号、従業員名称、性別、入社日}.

 構文論上、集合 (セット) として、この構成は正しい。したがって、この構成のままにしていても良いのだが、現実の事態に対する指示規則を配慮したら--つまり、(実体主義を前提にした) 意味論を導入したら--、性別と入社日が、従業員に帰属する性質 (従業員 「そのもの-の」 性質) かどうかは論点になる。

 (実体主義を前提にした) 意味論を、もし、厳正に適用すれば、以下の構成が正しい。

  (1) 人間を認知する。人間には性別がある。
  (2) 法人を認知する。
  (3) 人間が法人と雇用契約を結ぶ。
  (4) 雇用契約を結んだ人間が従業員となる。

 すなわち、「個体」 として認知されるのは、人間と法人であって、従業員は、それらのあいだで契約された 「様態」 にすぎない。したがって、人間には性別はあるが、従業員には性別はない、と判断できる。
 ただし、「或る企業のなかで起こる事態」 に対して、そういう構成図を描く企業は、まず、ないでしょうね (笑)。
 [ なぜなら、そういう構成図を描くことが 「無意味」 (あるいは、非 「合目的」 だから。 ]

 或る ドメイン (あるいは、範囲 [ range ]) のなかで、「『真』 概念とされる集合」 を示すのが意味論の論点である。そうであれば、或る企業のなかで起こる事態に対して、「人間 = 従業員」 とみなす 「解釈」 も成立する。そうだとすれば、従業員のなかに、性別があっても、「人間」 として 「偽」 にはならないが、たとえば、企業に対して男女均等法が適用されているかぎり、従業員 「そのもの-の」 性質として、「性別」 を記述することは 「合意された」 行為とは言い難い。しかし、いっぽうで、健康診断では、男女の診断項目がちがうので、従業員に対して男女を判断しなければならない。
 したがって、従業員 「そのもの-の」 性質ではないが、従業員が健康診断など 「に対する」 関係のなかで、性別に対して、なんらかの措置をとらなければならない。そういう事態に対応するのが VE である。

   {従業員番号、従業員名称、...}┼──┼{従業員番号 (R)、性別}.

 さて、{従業員番号 (R)、性別} は、数学的な セット (集合) ではない点に注意されたい。
 ただ、「人間 = 従業員」 という前提で、従業員のなかに性別を記述するが、性別を前提にして、職業上、不当な待遇をしないという合意であれば、以下の構成でも良い。

   {従業員番号、従業員名称、性別、...}.

 ただし、入社日は、性別とはちがう事態である。
 TM では、認知番号を使って作られた entity は、「event」 あるいは 「resource」 のいずれかになる。「event」 は、性質として、「日付 (現象が起こった日)」 が帰属する。そして、「resource」 は、「event」 以外の entity とされる。したがって、「resource」 には、「日付」 が帰属しない。
 入社日は、入社という できごと が起こった日である。すなわち、TM では、従業員という 「resource」 には帰属しない性質とされる。ただし、入社そのものは、たとえば、入社コードとか入社番号という認知番号を付与されてはいないので、「入社」 entity を認知することはできない。そういう事態に対応するのが VE である。

   {従業員番号、従業員名称、...}┼──┼{従業員番号 (R)、入社日}.

 VE は、意味論の観点に立って、或る entity (あるいは、対照表など) に帰属しない性質を、その entity から除去するために導入された措置である。言いかたを換えれば、認知番号を付与されていない事態に対して、個体として、積極的に認知するために導入された措置ではない点に注意されたい。すなわち、或る (あるいは、いくつかの) 性質をあつめて 1つの個体を認知するという 関係 モデル の タプル (tuple) のような考えかたをしていない点に注意されたい。

 TM’ では、VE は、そういうふうに作られるので、TM の サブセット (「区分コード (あるいは、null)」 を前提にして作られる部分集合) とはちがう。




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