2002年11月16日 作成 近世・近代・現代の日本語辞典 (一般) >> 目次 (作成日順)
2007年 4月16日 更新  


 近世・近代・現代の日本語に関する辞典 (国語辞典・漢和辞典・百科事典) を記載します。

 特殊な辞典 (ことわざ辞典・語源辞典・隠語辞典など) は、後日、改めて記載します。



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 日本語辞典は、「読書案内」 のなかで、私が最大に興味を抱いている領域だと思う。
 この ページ に記載した辞典・辞典のほかに、以下の古い辞典・事典も私は所蔵している (31ページ 参照)。

   ● 新撰字鏡
   ● 倭名類聚抄 (和名抄と略称)
   ● 類聚名義抄 (名義抄と略称)
   ● 伊呂波字類抄
   ● 下学集
   ● 節用集
   ● 日葡辞書
   ● 倭訓栞
   ● 俚言集覧
   ● 和英語林集成
   ● 嬉遊笑覧 (本 ページ にも記載)
   ● 守貞謾稿 (本 ページ にも記載)
   ● 和漢三才図会 (本 ページ にも記載)

 言語学者が、古い時代の言語資料のひとつとして、古い辞典・類書・事典をあつめるならいざしらず、一般の読書子が、こういう書物を あつめるというのは 「好事家」 以外のなにものでもないでしょうね。でも、私は、辞典類を手当たり次第に あつめる・ただの 「ものずき」 ではないつもりです。私が あつめた辞典・事典は、それぞれ、特徴ある佳作だと思っています。私は、数多くの古本店・書店を歩き廻りながら、これらの辞典・事典を地道に あつめてきました。それらの辞典・事典を手にとって立ち読みして、気に入った物だけを買ってきました。私は、言語学者でも辞書編集者 (lexicographer) でもないので、辞典・事典の良し悪しを判断する才識を持ちあわせていない。したがって、私が辞典類を選ぶ目安は、あくまで、「(私自身の) 好み」 の域にとどまっていることを ご了承ください。そして、私の好みは--したがって、購入する理由は--、以下の諸点のいずれかを充たしていることであるようです。

  (1) 辞典の成立時代の語彙・語法などの研究資料になる (語彙・用例が豊富である)。
  (2) 事典の成立時代の人々の生活を知る資料になる (類書的性質である)。

 すなわち、私は、辞典・事典を (総合的な知識を増やすための) 「読む」 書物とみなしています。
 ちなみに、「類書」 というのは、古い漢籍が導入していた記述法で、「芸文類聚」 「太平御覧」 などのように、自然現象・社会現象や事物に関する記述を既存の書物から抜粋して、(五十音順の事項を並べた形式とはちがって、) いくつかの部類に区分して体系化した書物です。「類書」 は、古代の中国で、皇帝が 天地自然から社会現象に至までの万物に関する知識を体得した統治者であることを示す勅撰の書物として編輯されました。日本の 「類書」 では、「古事類苑」 が有名です。

 日本で、欧米の百科事典にならった最初の百科辞書は、「大日本百科辞書」 (同文館、1902) だそうです。ただ、膨大な投資を費やし、同文館は、出版途中で、1912年に倒産したそうです。また、1902年に、三省堂が 「日本百科大辞典」 の出版をはじめましたが、三省堂も、かつて (1912年に) 倒産したそうです。ことさように、百科辞典の編輯は一大事業でした。「事典」 という言いかたを初めて使ったのは、「大百科事典」 (平凡社、1935年) です。

 百科事典の電子化は、「グロリア電子百科事典」 (1986年) が最初だそうです (私は、この百科事典の EB 版を使っています)。





 ▼ [ 江戸語を読む ]

 ● 江戸語辞典、大久保忠国・木下和子 編、東京堂出版

 ● 江戸語事典、三好一光 編、青蛙房

 ● 江戸語大辞典、前田 勇 編、講談社

 ● 近世上方語辞典、前田 勇 編、東京堂

 ● 江戸時代用語考証事典、池田正一郎、新人物往来社

 ● 江戸ことば百話、西山松之助 編、東京美術選書 58

 ● 江戸時代を読む あて字大辞典 魁本大字類苑、谷口松軒 編著、雄山閣

 ● 元禄文学辭典、佐藤鶴吉、藝林舎

 ● 近松語彙、上田萬年・樋口慶千代 共撰、冨山房

 ● 芭蕉語彙、宇田零雨、青土社

 ● 同訓異義辞典 (附 索引)[ 操觚字訣 (伊藤東涯)、譯文筌蹄 (荻生徂徠)] [ 復刻版 ]、名著普及会

 



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 私は、日本史を学習するのが好きです。日本史のなかで、私の興味は昭和時代に注がれていますが、昭和時代の次に江戸時代に対しても、多大な関心を抱いています。江戸時代の文献を読むために、江戸語の辞典を あつめた次第です。なお、江戸時代に関する百科事典 (江戸事典など) は、ここに記載しないで、「読書案内」 のほかの部類に記載していますので、それらの百科事典も参照して下さい (本 ホームページ の 「ページ 一覧表」 で以下のページを参照して下さい-- 115、179、183、187、191、195、199、207)。

 江戸時代の文献を読むときにも、普段、「古語辞典」 を使っているのですが (27ページ 参照)、「古語辞典」 を補うために、上述した辞典群を、たまに、参照します。儒学の文献 (荻生徂徠の著作など) を読むときには、専門的な漢和辞典を使います。「近松語彙」 「芭蕉語彙」 が出版されているのだから、「西鶴語彙」 も入手したいのですが、私の知るかぎりでは、「西鶴語彙」 は出版されていないようです。西鶴を読むために、私は、「元禄文学辭典」 を使っています。「元禄文学辭典」 の収録語彙は、おもに、西鶴の俳諧・小説および近松の戯曲から あつめられています。この辞典の 「序」 には、以下の文が綴られています (藤井乙男氏の記した 「序」)。

      明治二十四年に言海が出て以來、大小幾多の國語辭書が續出して、大日本國語辭典・言泉の
     如き大部なものができるに至つた。是等は語數の豊富と解釋の精確とを標榜して、遺憾なきもの
     の如くあるが、その實なほ幾多の缺陷あるを免れない。その特に著しいことは、鎌倉以降江戸
     時代の語彙の不足と語釋の不備とである。これでは太平記や西鶴や近松は到底まんぞくに讀め
     ない。奈良・平安兩期の文獻は國學者諸先輩の精勵によつてほぼ整理されたが、武家時代の物
     はまだ十分研究が盡されて居ない。(略) この理想に到達する順序として、萬葉・源氏・
     謠曲・俳諧・西鶴・近松等、それぞれ特別の辭典がまづ成立すべきものと思ふ。佐藤君の元祿
     辭典はこの期待に應ずる最初の試みで、陳勝・呉廣の勇しい意氣込を見せる。(略)

 また、この辞典に寄せられた他の 「序」 では、以下のように綴られています (吉澤義則 氏の 「序」)。

      八月號の雑誌のそれこれを見ちらしてゐる中に、ふと 「自然」 に尾山篤二郎氏が 「西鶴を讀ん
     で難しいので匙を投げた、第一これを讀んで、曲りなりにも薄々わかる程度の字引がない」 と
     いつてゐられるのが目についた。丁度尾山氏がこの原稿に筆を執つてゐられた時は、元祿文學
     辭典の印刷が進行しつつある時であつた。(略)

 「西鶴を讀んで難しい」 という感想は、西鶴の作品を直に読んだひとなら ひしひしと感じるでしょう。
 この辞典に寄せられた他の 「序」 では、以下のように綴られています (藤村 作 氏の 「序」)。

      西鶴を讀んでゐる人は多い。又近松を讀んでゐる人も多い。それらの人でも、西鶴近松が
     作品中の特殊時代語を取つてその解を求めたら、立ちどころに明解を與へることは出來まい。
     元祿文學が世に難解を訴へられてゐるのは、一つには難語の多い爲である。(略)

 たとえば、以下の文を読んでみて下さい。

     貴坊御事はつねづね赤辨慶とある名を呼ばざるは、道心堅固の御身目出度存候
     (西鶴、「萬文反古」)

 この文中の 「赤辨慶」 の意味をわかりますか。ふつうの 「古語辞典」 には収録されていないでしょう。「元禄文学辭典」 によれば、その意味は、「道心堅固で、浮氣などない者の稱」 だそうです。たとえば、以下の文のなかで、「あぐり (あぐる)」 の意味が わかりますか。ふつうの 「古語辞典」 には収録されていないでしょう。

     あぐりしやれたる取肴、又飲みまけてよくよくの事の、三番太鼓が何時鳴つたやら
     (西鶴、「二代男」)

 「元禄文学辭典」 によれば、「あちこちとあさる意か」 と記されています。
 西鶴・近松を読むには、ふつうの 「古語辞典」 を補うために、「江戸語辞典」 を、ぜひとも、てもとに置かなければならないでしょうね。





 ▼ [ 国語辞典 ]

 ● 日本国語大辞典 [ 第二版 ] (全 13巻)、小学館

 ● 国語大辞典、尚学図書 編集、小学館

 ● 言海、大槻文彦 著、[ 吉川弘文館 版、有精堂 版などがある ]

 ● 新言海、大槻文彦 著・大槻茂雄 補、日本書院 版

 ● 新編 大言海、大槻文彦 著、冨山房

 ● 大言海分類語彙、風間力三 編、冨山房

 ● 修訂 大日本國語辭典、上田萬年・松井簡治 共著、冨山房

 ● 日本大辭典 言泉 (全 6巻)、落合直文 著、芳賀矢一 改修、大倉書店

 ● 日本大辭典 ことばの泉 [ 復刻版 ]、落合直文 著、ノーベル 書房

 ● 日本大辭典 [ 復刻版 ]、山田美妙 著、ノーベル 書房

 ● 大辭典、平凡社編

 ● 大辞林、松村 明 編、三省堂

 ● 漢字引き・逆引き 大辞林、三省堂編修所 編、三省堂

 ● 新潮 国語辞典 [ 古語・現代語 ]、山田俊雄 他編集、新潮社

 ● 新潮 現代国語辞典 [ 第二版 ]、山田俊雄 他編集、新潮社

 ● 三省堂 新国語中辞典、三省堂編修所 編、三省堂 (版は古いが--昭和 42年版--捨てがたい)

 ● 例解 国語辞典、時枝誠記 編、中教出版

 ● 例解 新国語辞典、林 四郎 編集代表、三省堂

 ● 用例豊富な 日本語表記大辞典、天沼 寧・高木教典 監修、三宝出版

 ● ローマ 字で引く 国語新辞典、福原麟太郎・山岸徳平、研究社

 ● 日本語尾音索引 (普及版)、田島・丹羽 共編、笠間書院

 ● 日本民俗語大辞典、石上 堅 著、桜楓社

 ● 明治のことば辞典、惣郷正明・飛田良文 編、東京堂出版

 ● 究極版 逆引き頭引き 日本語辞典、小内 一、講談社+α文庫

 ● 15万 例文・成句 現代国語用例辞典、林 史典・岡昭夫 編、教育社

 ● 日本語学習者のための副詞用例辞典、島本 基 編、凡人社

 ● 動詞・形容詞問題語用例集、国立国語研究所、秀英出版

 ● 形容詞の意味・用例の記述的研究、国立国語研究所、秀英出版

 ● 現代語の助詞・助動詞 --用法と実例--、国立国語研究所、秀英出版

 ● 日本形容詞辞典、村石利夫、日本文芸社

 ● 現代形容詞用法辞典、飛田良文・浅田秀子 著、東京堂出版

 ● 日本語文型辞典、グループ・ジャマシイ 編著、くろしお出版

 ● 日本語基本動詞用法辞典、小泉 保 他編、大修館書店

 ● 難訓辞典、井上頼圀・高山 昇・莵田茂丸 合編、日本図書 センター

 ● ことばの意味 (辞書に書いてないこと) [1、2、3 ]、柴田 武 他、平凡社選書 [ 47、66、73 ]

 



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 近代的な国語辞典は、明治維新後まもなく、文部省が木村正辞・横山由清らに編輯させた 「語彙」 (1871-1881) だそうですが、それが中絶して、大槻文彦に命じて編輯させた 「言海 (ことばのうみ)」 (1889-1891) が、事実上、わが国で最初の国語辞典だそうです--このいきさつは、「言海」 の序のなかで綴られています。「言海」 は、「大言海」 (1932-1937) として集大成されました。「大言海」 は、一冊に合本した版 (「新編 大言海」) が、冨山房から出版されています (私が所蔵している 「大言海」 は、この版です)。私は、「言海」 も所蔵していますが、日本初の国語辞典として、かつ、「大言海」 の前身として、記念に所蔵しているのであって、日々 使用するために買った訳ではない。「大日本國語辭典」 (1915-1925) も、一冊に合本された版 (修訂 大日本國語辭典) が出ています (私が所蔵している 「大日本國語辭典」 は、この版です)。「大言海」 と 「大日本國語辭典」 は、そのあとに出版された国語辞典・古語辞典の多くが、たいがい、参考にしている 「原典」 のようです。ただ、「大言海」 「大日本國語辭典」 「日本大辭典 言泉 (落合直文)」 「日本大辭典 (山田美妙)」 および 「大辭典 (平凡社編)」 は、いまとなっては、現代語辞典としての使用価値が ほとんどないでしょうね。それらは、「古語辞典」 として使うのが良いでしょう。

 「大言海」 は、「個性的な」 語釈・語源が特徴で、「ねこ (猫)」 に関する語釈が その例として、多々、引用されますが、最近出版された 「明鏡国語辞典」 でも、「猫」 の記述は、「大言海」 の記述を継承しています。「日本大辭典 (山田美妙)」 は、国語辞典のなかに、アクセント を示した点が特徴です。 「大辭典 (平凡社編)」 は、固有名詞の記載が多い。

 大槻文彦氏 (「大言海」 の編者) の ご子息で 自然科学の専門家だった大槻茂雄氏が 「大言海」 を現代語辞典として増補編修された 「新言海」 を出版なさいました。私は、「新言海」 を気に入っているのですが、「新言海」 は、辞典として、ほとんど、話題にされてこなかったようです。たしかに、「新言海」 に近い辞典として 「三省堂 新国語中辞典」 があるので、私は、どちらかといえば、「三省堂 新国語中辞典」 を使っていますが。

  国語辞典の最高峰は、「日本国語大辞典」 でしょう。ただ、大冊なので、ふだん、たびたび、使う辞典ではないでしょうね。現代語辞典として私が ふだん 使っている辞典は、「大辞林」 「新潮 国語辞典」 および 「新潮 現代国語辞典」 です。「広辞苑」 が一般に ウケ が良いようですが、「大辞林」 のほうが 「歴史 (日本史)」 に関する語彙を豊富に収録しているので、私は 「大辞林」 のほうを愛用しています。もっとも、「広辞苑」 は、電子辞書の多くが搭載しているので--私が使っている電子辞書も 「広辞苑」 を搭載しているので--、私は、外出中、電子辞書を服の ポケット に入れて携帯していて、電子版の 「広辞苑」 も使っています。

 私は、ことば の概念そのものよりも、ことば の使われかたのほうに興味を抱いているので、日本語であれ英語であれ、「例文集」 (および、例文を豊富に記載した辞典) を あつめています。そして、文を綴る際には、それ向きの辞典を使っています。文を綴る際に私が使っている辞典は、「例解 新国語辞典」 「用例豊富な 日本語表記大辞典」 と 「ローマ 字で引く 国語新辞典」 です。

 国語辞典の使いかたを、かつて、「佐藤正美の問わず語り」 で、「辞書の使いかた (国語辞典)」 として綴ったので参照して下さい (118 ページ)。





 ▼ [ 類語辞典 ]

 ● 日本語語彙体系、NTT コミュニケーション 科学基礎研究所・岩波書店 [ CD-ROM 版 ]

 ● 日本類語大辞典、志田義秀・佐伯常麿 編、講談社

 ● 同意語二十萬辭典、津村清史 編、国書刊行会

 ● 類語大辞典、柴田 武・山田 進 編、講談社

 ● 類語新辞典、中村明 (主幹)・芳賀緩・森田良行 編、三省堂

 ● 類語辞典、広田栄太郎・鈴木棠三 編、東京堂出版

 ● 分類語彙表 [ 増補改訂版 ]、国立国語研究所、大日本図書

 ● ハンディ版 類語辞典、類語辞典編集委員会、柏書房

 ● 必携 類語実用辞典、武部良明 編、三省堂

 ● ことば選び実用辞典、学研辞典編集部 編、学研

 ● カタカナ 類語辞典、三省堂編修所 編、三省堂

 ● 俳句類語辞典、三省堂編修所 編、三省堂

 ● 俳句類語表現辞典、宗田安正 監修、学研

 ● 類語・文例辞典、水守亀之助 編、柏書房

 ● シソーラス 活用辞典、アスク・(株) 言語工学研究所 [ CD-ROM 版 ]

 



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 類義辞典には、以下の 2つの系統があります。

  (1) 類語を属性形式に従って体系化した辞典
  (2) 類語を五十音順に配列した辞典

 (1) の代表的な辞典は、「日本語語彙体系」 です。たとえば、「愛」 を調べたら、以下の 4つが表示されます。

  語彙 あい [ 愛 ] [ 名 ]
  語彙 あい [ 愛 ] [ 固 ]
  語彙 あい [ 愛 ] [ 接尾 ]
  語彙 まな [ 愛 ] [ 接頭 ]

 [ 愛 ] [ 名 ] (名詞の 「愛」) を選ぶと、「愛」 に関する類義語・関連語が数多く示されます。そして、「愛」 の属性体系を選んで親概念を遡れば、「愛憎」 → 「対人関係」 → 「感情」 → 「精神」 → 「人間活動」 → 「事」 → 「抽象」 という一般名詞意味属性体系の道筋を辿ることができます。「愛憎」 は、「対人関係」 の属性のなかで記載されていて、「対人関係」 として、「人情」 「愛憎」 「親疎」 「善意・悪意」 「同情・嫉妬」 「恩・恨み」 「尊敬・軽蔑」 「尊重・無視等」 「感謝・ひがみ」 「信用・不信用」 「奉仕・私心」 「対人感情 (その他)」 がふくまれて、それぞれ、膨大な類義語・関連語を記載しています。同様にして、「対人関係」 の親概念である 「感情」 を選んだら、「感情」 の属性体系が示され--たとえば、「情緒」 「自我感情」 「対人感情」 「情操」 「気分」 など--、同じように、それぞれの概念の類義語・関連語を調べることができます。
 この類語辞典は、最大・最良の類語辞典だと思います。スピノザ (哲学者) が、もし、現代に生きていて、そして、この辞典を活用できたら、「エチカ (Ethica)」 を、どのように記述したかしら。

 (2) の辞典には、以下の 2つの系統があります。

 (2)-1 見出し語に対して、類義語・関連語を網羅的に記載する。
 (2)-2 見出し語に対して、「此本項に或形容物の冠れるものの類語を細項として」 記載する。
     (すなわち、「意味」 から類語を探す reverse 形式)

 (2)-2 の辞典として最大・最良の辞典は--出版年度が古いのですが--、「日本類語大辞典」 (志田義秀・佐伯常麿) でしょう。この辞典は、講談社学術文庫にも再録されているので--ただし、上・下の 2冊形式になっていますが--入手しやすい。たとえば、「愛」 は、以下のように記述されています。

  あい [ 愛 ] <名> (愛すること) 「あいす。あいらし。參看」。寵愛チヨウアイ寵幸チヨウカウ愛寵アイチヨウ寵福チヨウフク寵顧チヨウコ愛顧アイコ。いつくしみ。いとほしみ。かはゆさ。ちよう (寵)。 [ 古 ] うつくしみ。いつくしび。うるはしみ。
  ◎ うやまひと ──── ○ 敬愛ケイアイ
  ◎ おんと ──── ○ 恩愛オンアイ
  ◎ おやの ──── ○ 親愛シンアイ
  ◎ かうと ──── ○ 孝愛カウアイ
  (以下、略)

 たとえば、この辞典で 「しよもつ (書物)」 を調べてみて下さい。その記載項目の豊富さに驚嘆するでしょう。
 この辞典に記載されている類義語・関連語は、現代では、難語・美辞麗句とみなされて使われない語が多いのですが、なんらかの概念を考えていて、その概念に近い想念を得ているのだけれど着想を掴みきれないときに、この辞典を読めば、着想を促してくれるでしょう。この辞典は、「読む」 辞典です。

 (2)-1 系の辞典は、文を綴るときに使うでしょう。文を綴るときには、国語辞典よりも類語辞典を使うほうが多いでしょうね。したがって、大冊ではなくて、コンパクト な版が使いやすいでしょう。私は、「ハンディ版 類語辞典」 (柏書房) と 「必携 類語実用辞典」 (三省堂) を、つねに、てもとに置いて多用しています。類語辞典の使いかたは、かつて、「佐藤正美の問わず語り」 で、「辞書の使いかた (日本語の類語辞典)」 として綴ったので参照して下さい (174 ページ)。





 ▼ [ 漢和辞典 ]

 ● 大漢和辞典 (全 15巻)、諸橋轍次、大修館書店

 ● 新漢和辞典、諸橋轍次 他著、大修館書店

 ● 漢和大辞典、藤堂明保 編、学習研究社

 ● 新大字典、栄田猛猪 他、講談社

 ● 修訂増補 詳解漢和大字典、服部宇之吉・小柳司気太 共著、冨山房

 ● 新漢和大字典、細見佐熊 編著、文進堂

 ● 漢字の読み方 (角川小辞典 3)、武部良明、角川書店

 ● 難訓漢字辞典、三省堂編修所 編、三省堂

 



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 漢和辞典の最高峰は、「大漢和辞典」 でしょう。この辞典があれば、ほかの辞典はいらないと言っても良いのですが、なにぶん、大冊なので、ふだん、てもとに置いて、常用するという訳にはいかないでしょうね。したがって、「大漢和辞典」 と常用する中辞典を揃えたほうがいいでしょう。常用する中辞典は、漢字のほかに、「国字」 (日本で作られた漢字、たとえば 「榊」 「辻」 など。和字ともいう) をふくめて、収録語彙 (語数) がちがうので、どういう中辞典を使うかは、読む書物によって--たとえば、中国の漢文、上代特殊仮名遣、江戸時代の漢文、現代の日本語文など--判断されなければならないでしょうね。

 私は、ふだん、近代・現代の日本語文を読むときには、「新漢和大字典」 を使っているのですが、江戸時代の漢文 (たとえば、荻生徂徠の著作など) を読むときには、ほかの辞典 (「新大字典」 「漢和大辞典」) を使っています。たとえば、「生に竢 (ま) つ」 という意味を調べるときに、「竢」 は、ふつうの学習辞典的な漢和辞典には記載されていないでしょう--いま、てもとにある漢和辞典を調べたら、「新漢和大字典」 には記載されていないのですが、「新大字典」 「修訂増補 詳解漢和大字典」 には収録されています。漢和辞典も一冊あれば用が足りるという訳ではないので、みずからの読書の目的にあわせて、数冊、所持したほうが良いでしょう。
 ここに記載した辞典のほか、「字統」 (白川静) と 「字源」 (簡野道明) も定評があります。

 漢和辞典の使いかたは、かつて、「佐藤正美の問わず語り」 で、「文を綴るための辞典 (漢和辞典)」 として綴ったので参照して下さい (466 ページ)。





 ▼ [ 百科事典 ]

 ● 新撰 大日本 永代節用無盡蔵 (元版は寛永三年、文久四年に再版された版刷り。)

 ● 合類 大節用集 (明和三年に再版された版刷り。)

 ● 嬉遊笑覧、喜多村信節 著、文政 13年。 [「日本随筆大成」 (吉川弘文館) の別巻 (全 4巻)で入手できる。]

 ● 守貞謾稿、喜多川守貞 著、嘉永 6年。 [ 東京堂出版で入手できる (全 5巻)。]

 ● 和漢三才図会 [ 正徳二年成立。] [平凡社の 「東洋文庫」 で入手できる (全18 巻)。]

 ● 家庭辭書、郁文舎編輯所、郁文舎・積文社 [ 明治 38年出版 ]

 ● 日本家庭百科事彙、芳賀矢一 編纂、冨山房 [ 明治 39年出版 ]

 ● 訂正増補 国民百科辞典、冨山房 (大正 2年版である。)

 ● 新修 百科大辞典 [ 復刻版 ]、ノーベル 書房 [ 昭和 9年が初版である。徳富蘇峰が 「推薦の辞」 を綴っている。]

 ● 学習百科辭典、三省堂百科辭書編輯部、三省堂 [ 昭和 9年出版、日本初の小學生上級用百科辭典 ]

 ● 最新百科大辭典、愛之事業社編纂部、愛之事業社 [ 昭和 12年出版 ]

 ● 新明解 百科語辞典、三省堂編修所 編、三省堂

 ● 小百科事典、平凡社

 ● 大事典 desk、講談社

 ● 大図典 view、講談社

 ● 大事典 NAVI、講談社

 ● 大百科 丸善 エンサイクロペディア、丸善

 ● 平凡社世界大百科事典 [ CD-ROM 版 ]

 ● ブリタニカ 国際大百科事典 (小項目編) [ EBXA 版 ]

 



[ 読みかた ] (2007年 4月16日)

 私は、「百科事典を読む」 のが好きです。仕事する机の側には、「大事典 desk」 と 「大図典 view」 を置いて、ときどき、読んでいます。「大図典 view」 は、収録されている豊富な写真を眺めているだけでも愉しい。百科事典は、出版社にとって、出版したあとで、最新情報を つねに更新し続けるのが苦労でしょうが、私は、百科事典を 「古事類苑」 のように考えていて、出版された年までの--すなわち、「当時の」--制度文物の記録とみなしているので、出版されたあとの更新には無頓着です。幸い、私たちは、パソコン と インターネット が普及した時代に生きているので、「今の」 情報を入手するなら、インターネット を経由して ウェッブ に記載された情報を探せば良いので、百科事典が、まいとし、年鑑を継続出版しなければならないと私は考えていない。逆に言えば、私は、(百科事典を 「当時の」 制度文物を記録した歴史物とみなしているので、)ウェッブ に記載されている Wikipedia を百科事典として重視している訳でもない。

 百科事典の使いかたは、かつて、「佐藤正美の問わず語り」 で、「辞書の使いかた (百科辞典)」 として綴ったので参照して下さい (202 ページ)。




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