2005年 8月16日 作成 同値関係 (および、partition、refinement) >> 目次 (作成日順)
2009年 9月16日 補遺  


 
同値関係

 数学では、「等しい」 という概念は、たぶん──小生は、数学の専門家ではないので (数学の体系を知っている訳ではないので)、推測でしか言えないが──、基本的な概念である、と思う。2つの モノ が等しいという関係、すなわち、「=」 を使って記述される関係は、以下の性質を示している。

  (1) どんな モノ も、自分自身と等しい (すなわち、任意の a について、a = a)。
  (2) a と b が等しいなら、b と a も等しい (a = b → b = a)。
  (3) a と b と c が等しいなら、a と c も等しい (a = b ∧ b = c → a = c)。

 以上に述べた 3つの性質を示す 2項関係を 同値関係 (equivalence relation) という。

 R を集合 A 上の同値関係とする。そのとき、メンバー a と R の関係にあるような、 A の メンバー 全体の集合を、(a をふくむ R に関する) 同値類 という。そして、a を同値類 [ a ]R の代表 メンバー という。ただし、R がわかっているなら、[ a ]R を、単純に、[ a ] と略式に記述する。

 
 
分割 (partition、あるいは、類別)

 集合 A の部分集合の族を考えてみる (集合を メンバー とする集合のことを集合族という)。集合族 π が、以下の 2つの条件を満たすなら、π を A の分割 (partition) あるいは、類別 という。

  (1) S ∈ π ∧ T ∈ π ∧ S ≠ T ⇒ S ∩ T = φ.
  (2) A = ∪ S.
        S∈π

 そして、分割 (類別) の メンバー である集合のことを 「 (あるいは、ブロック)」 という。
 数式を使って記述すると、ややこしいように感じるかもしれないが、上述した式が示していることは、単純に言えば、以下の意味である。

  (1) A は、「集合の集合」 である。
  (2) π は、A の部分集合を集めた全体である。
  (3) π は、S と T から構成される。
  (4) S と T は、交叉しない。

 つまり、A は、同値関係によって、同値類 (S と T) を 「類」 として、類別されることを言っている。
 そして、A 上の同値関係 R による同値類全体の作る集合 (集合族 π) を A/R というふうに記述して、A の R による 商集合 という。

 
細分 (refinement)

 R1 と R2 が、A 上の同値関係である、とする。
 そして、∀ x, y ∈ A に対して、xRy1 → xRy2 が成立するならば、R1 は R2 の 「細分」 である、という。
 すなわち、∀ x ∈ A について、[ x ]R1 ⊆ [ x ]R2 であり、R2 の同値類は、R2の同値類いくつかの和集合となる。言い換えれば、A/R1 ⊆ A/R2 のこと。

 以上のような言いかたをすれば、ややこしいように感じるが、単純に言えば、A/R1 と A/R2 は、(同値関係だから、) 総数 (cardinality) が同じであって、A/R1 は、A/R2 を、さらに、こまかに、仕切った状態 (集合族) である、と考えればよい。

 
分割と細分を、T字形風に記述すれば...

                     ┌─────┐
                     │     │
                     │     │
                     └──┬──┘
                        │
                    ┌───┴───┐
                    │       │
            分割   ┌──┴──┐ ┌──┴──┐
           ──────┼─────┼─┼─────┼──→
          │      │     │ │     │
          │      └──┬──┘ └─────┘
        細分│         │
          │     ┌───┴───┐
          │     │       │
          │  ┌──┴──┐ ┌──┴──┐
          │  │     │ │     │
          │  │     │ │     │
          │  └─────┘ └─────┘
          ↓

 
 したがって、T字形 ER手法 (TM および TM’) では、サブセット の交叉を認めていない。



[ 補遺 ] (2009年 9月16日)

 本 エッセー を拙著 「モデル への いざない」 のなかに、そのまま収録しました (「モデル への いざない」 95ページ・96ページ)。

 本 エッセー で述べた 「分割と細分」 は、TM (T字形 ER手法の改良版) のなかで重要な役割を果たしています。TM の技術は、以下の 6つの ブロック で構成されています。

 (1) 個体の認知
 (2) 関係の性質
 (3) 関係の文法
 (4) データ の周延 (集合的と周延的)
 (5) データ の多値
 (6) みなし 概念

 本 エッセー で述べた 「分割と細分」 は、(4) の 「集合的性質・周延的性質」 で使われています。すなわち、「セット と サブセット」 を構成するときに、「分割と細分」 を適用しています。言い換えれば、 ひとつの個体 (entity) を 「区分 コード」 を使って さらに詳細に管理している場合に、「区分 コード」 が 「分割と細分」 に対応するので、その個体 (集合として記述される個体) に適用されている 「区分 コード」 が 「正しい部分集合を構成しているかどうか──言い換えれば、集合が周延しているかどうか──」 を調べる技術として、本 エッセー で述べた数学的概念を使っています。

 もし、「区分 コード」 が正しい 「分割と細分」 を構成しない場合には、どのような弊害が起こるかについては、拙著 「赤本 (データベース 設計論)」 のなかで示していますし──92ページから 101ページまで──、本 ホームページ のなかで示していますので──本 ホームページ 「データ 解析に関する FAQ」 の 「テーマ べつ」 index で まとめられている 「サブセット」 に関する エッセー 群──、参照してください。

 なお、最近では、「サブセット」 を説明するときには、「分割と細分」 を使わないで、「切断」 概念を使っています。





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