2023年 4月15日 「2.9 構文論的に証明できて、かつ意味的に成り立つ...」 を読む >> 目次に もどる


 モデル とは 「現実(事実)を写像した形式的構造」 です。写像は 「変換」 あるいは 「関数」 と云い、「形式的」 とは 「論理的」 と云うことです。つまり、モデル とは、事実に対して 「関数」 を使って 「論理的」 構造をつくる、ということです。そのためには、「関数」 の構造が先ず立てられて、その 「関数」 のなかに真とされる値が充足される。言い替えれば、「構文論が先で、意味論は後」 です、それが論理的意味論ということです。そして、その 「論理的」 構造が正しい (真である) ということは、次の 2つの正しさが満たされていなければならない。

  (1) 構文論的に証明できる(「妥当な構造」 である)

  (2) 意味論的に成り立つ(「真とされる値」が充足される)

 (1) を L-真 (導出的真、健全性) と云い、(2) を F-真 (事実的真、完全性) と云います──(1) と (2) をいっしょにして、「完全性」 ということが多い、この 「完全性」 を証明した人物が クルト・ゲーデル です。

 ゲーデル が証明した完全性は 2つあって、ひとつが 「論理」 (述語論理) は完全であるということ (恒真の意味論的完全性、「完全性定理」 と通称されている)、もうひとつが 「理論」 (「論理」 を使って構成された無矛盾な体系) には真とも偽とも判断できない文があるということ (公理系の構文論的完全性、「不完全性定理」 と通称されている)。

 そして、この 「不完全性定理」 が起点となって、数学上で計算可能関数が探究されて、コンピュータ が生まれる契機となったのです。いわば、ゲーデル の 「不完全性定理」 は、コンピュータ の故郷です。
 ちなみに、「ゲーデル の定理」 と云えば、数学では 「不完全性定理」 のことを指します。 □

 




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