200631

応用編-3 「製品」 は entity

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201121日 補遺

 

 

 本節は、いまふりかってみれば、極めて示唆に富んだ論点を秘めていると思う。
 本節は、当時の記述のままに読めば、resource の組み合わせ次第では、event (事業過程) を再編成できることを訴えて、「『event』 として構成された対照表が、じつは、『resource』としての構成表を示している」 点に言及している。すなわち、対照表が、以下の 2つの性質を帯びていることを語っている。

  (1) 「event」 を言及する (注意--「指示」ではなくて、「言及」 である。)
  (2) 「構成表」 を示す。

 TM は、第一階の述語論理を前提にしているので、(1) の対照表は、(「取引日」が付属すれば、) 「event」 として扱うが、(2) の対照表は、たとえ、「resource」 を言及しても、あくまで、構成表として扱い、entity と同列に扱わない。ただ、この 2つの性質は、文法上、「巧妙に」 導入されている点を注意してほしい。たとえば、以下の諸点を考えてみる。

  (1) 対照表と event との対応
  (2) 対照表と resource との対応

 (1) では、対照表の (R) event のほうに複写し、(2) では、新たな対照表を作る文法になっているので、対照表が 「構成表」 として考えられている点を気づいていた人たちがいました──たとえば、高山さんは、小生の早稲田大学 エクステンションセンター の講義で、それを確認してきました。

 対照表は、そもそも、「構成表」 です。そして、その 「構成表」 が、際立って、event の性質を示すのであれば、event として認知しますが、文法上、「構成表」 として扱っています。当然、event として認知された対照表を event の文法を適用できます--それを、次節 (応用編-4 「対照表 + resource = 対照表」) で示しています。そういう意味論的な説明もできますが、構文論的には、対照表は 「構成表」 として扱っても、同じ構造になります。その理由を考えるなら、哲学的に、事物と事象は、いずれも、「現象」 として考えることができるのかもしれないという点を丁寧に研究しなければならないのでしょうが、小生は、いまだ、その点を追究していない点を正直に述べておきます (今後の課題として未着手状態です)。

 
[
補遺 ]

 「『event』 と 『構成表』」 の論点は、たぶん、関係主義と実体主義のはざまにある深淵 (論点) だと推測しているのですが、小生は、いま、数学の モテ゛ル 理論を学習していて、哲学のほうを後回しにしています。
 ただ、関係主義と実体主義の兼ねあいは、いずれ、検討しなければならない論点だと思っています。 □

 



[ 補遺 ] 201121日)

 本 エッセー は、20063月に綴られているので、「赤本」 を出版したあとに綴られた エッセー です。そうであれば、「対照表」 を説明するときに、「真」 概念 (「L-真」 および 「F-真」) を使っていてもいいはずなのですが使っていないですね。

 意味論的な 「真」 概念には次の 2つの概念があります。

  (1L-真 (無矛盾性)
  (2F-真 (完全性)

 「L-真 (導出的な真)」 は、無矛盾性を実現している状態に対して適用される概念です。すなわち、形式的構造が、公理に従って導出されて矛盾がないという状態を云います。「F-真」 は、「L-真 (事実的な真)」 を実現している形式的構造が現実的事態と対比して一致している状態を云います。

 さて、「対照表」 は、TM の関係文法に従って演算された──したがって、「L-真」 を実現した──「構成表」 です。そして、その 「構成表」 は、もし、その性質として 「日付」 が帰属する場合には、「event」 として 「解釈」 します──したがって、「F-真」 を実現した状態として 「解釈」 します。

 応用編-3 「『製品』 は entity か」 で説明されている 「構成表」 は、「F-真」 状態です。したがって、基本的には、「event」 として 「解釈」 するはずの 「構成表」 ですが、「resource」 としても 「解釈」 できます。その性質を 「『製品』 は entity か」 という観点で扱ってみました。すなわち、「対照表」 は、「event」 とも 「resource」 とも 「解釈」 できるということ。そして、その 「解釈」──「event」 か 「resource」 かという 「解釈」──は、文脈のなかでしか判断できないでしょうね。

 ここで論点になるのが、「対照表」 の文法です。「対照表」 は、構文論上──すなわち、「記号演算」 上──、「resource」 の組なので、「resource」 の文法を適用します。したがって、次のような演算します。

  (1) 「対照表」 と 「resource」 とのあいだに関係を構成する場合には、
    新たな 「対照表」 を生成する。

  (2) 「対照表」 と 「event」 とのあいだに関係を構成する場合には、
    「対照表」 の (R) を 「event」 のほうに入れる。

 すなわち、「対照表」 は、構文論および意味論の観点で説明すれば、以下のとおり。

  (1) 構文論上、「resource」 (の組) として扱う。

  (2) 意味論上、「F-真」 ならば、基本的に、「event」 として 「解釈」 する。
    ただし、「resource」 として 「解釈」 できる場合もある。

「対照表」 が意味論上 「F-真」 を実現している場合、上述したように、「event」 とも 「resource」 とも 「解釈」 できることが起こるので、TM では、以下の 「解釈」 規則を導入しています。

  「対照表」 は、その性質として、「日付」 が帰属するか、あるいは、「日付」 を仮想したい場合、
  そして、そのときに限り、「event」 として 「解釈」 する。







 

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