2019年 1月 1日 「1.2 論理定項」 を読む >> 目次に もどる


 本節の主要概念は、次の 3点です。

 (1) 項 (定項)

 (2) モーダス・ポーネンス

 (3) 量化

 
項 (定項)

 「項」 は、2つに分けられます──「変項 (変数)」 と 「定項 (定数)」。代数言語 L では──数学のそれぞれの部門 (領域) で 「項」 が定義されていて、ここでは代数 (あるいは、論理) の領域に限って述べていますが──、「項」 は次のように定義されます。

 (1) 変数は項である (x, y,・・・の アルファベット を使う)。

 (2) 関数 f を変数とするとき、f (x), f (y),・・・は項である。

 (3) 定数は項である。

 定数 (定項) とは、文 (式) のなかで 「意味」 を変えない記号のことです。たとえば、代数では、+ とか − とか × とか ÷ とか = などが定数です。Logic (論理) の定数を ふつう 論理定項と云います──論理定項は、次の5つです。

 (1) AND (連言という、記号は ∧)
 (2) OR (選言、∨)
 (3) NOT (論理的否定、¬)
 (4) IF (仮言、⇒)
 (5) 論理的同値 (等しい、≡)

 それらの使用例は 「いざない」 を読んでください。
 さて、論理定項のなかで、興味深いのは論理的否定 (¬) です。この定項は、文を接続する項ではなくて、文に対する演算を示す項です。或る意味では、この定項は思考の起点になっていると思ってもいいくらいです──その例として、「いざない」 では、「シェファー の棒記号」 および ウィトゲンシュタイン の 「論理哲学論考」(のなかで述べられている 「論理の一般形式」) を示しました。実は、私が 「シェファー の棒記号」 を初めて知ったのは、ウィトゲンシュタイン の 「論理哲学論考」 を読んで、そのなかで触れられていたからです。論理的否定さえあれば、連言・選言・仮言を作り出すことができます (それらの例は 「いざない」 を読んでください)。ものごとを考えるとき、対象の論理的否定 (あるいは 「対偶」) を考える癖をつけておけば、論証を構成するうえで きっと役立つでしょう。

 
モーダス・ポーネンンス

 モーダス・ポーネンンス (p ⇒ q において、p が真なら q も真であるとき、そしてそのときに限り有効であるということ) は推論の鉄則です。これを次の形式で書きます──

   p ⇒ q
   p
  ─────
  ∴q
 「対偶」 とは、p ⇒ q が真、¬q が真であれば ¬p も真である──
 [ p ⇒ q ≡ ¬q ⇒ ¬p. ]

   p ⇒ q
  ¬q
 ──────
 ∴¬p
 「三段論法」 とは、p ⇒ q が真、q ⇒ r が真であれば、p ⇒ r も真である──
 [(p ⇒ q)∧(q ⇒ r) ⇒ (p ⇒ r)]

   p ⇒ q
   q ⇒ r
  ─────
  ∴p ⇒ r
 「いざない」 では、間違った推論の例として、次の例を示しています──

  すべての哺乳類は生物である。
  すべての猫は生物である。
 ────────────────
 ∴すべての猫は哺乳類である。

 一見 妥当な推論のように聞こえますが、「三段論法」 の規則を違反していて、間違った推論であることは判断できるでしょう。なお、p ⇒ q は、¬ と ∨ を使って表すことができます──

  p ⇒ q ≡ ¬p ∨ q.

 この同値式は、数学の証明のなかで多々使われるので覚えておいてください。なお、どうして p ⇒ q が ¬p ∨ q になるのかは、「いざない」 を読んでください。

 
量化

 変数を扱うときには、その変数が走る (存在する) 範囲を明らかにしなければならない。そして、量 (与えられた項が成立する状態記述 [ すなわち、真と偽 ]) を明らかにしなければならない。それを量化といいます。量化には、「すべての」 と 「いくつかの」 があります──それぞれを記号で書けば、∀ と ∃。∀ (全称記号) は、All の略で、∃ (存在記号) は Existential の略です。量化記号も定数 (定項) です。次に例を示します──

  佐藤正美はシステム・エンジニアである。

 このように変数を使っていない文を 「単称命題」 といいます。
 変数とは代名詞と思えばいい。すなわち、項として 「such that」(...というような モノ) として扱うということです。先の単称命題のなかの 「佐藤正美」 を代名詞にして、「...というような人が システム・エンジニア である」 とすれば──

  x は システム・エンジニア である。

 この文のままであれば、x は自由変数なので、変数が走る (存在する) 範囲が明らかになっていません。そこで、対象となる モノ として 「人間」 の集合を考えれば、範囲が明らかになったのですが、すべての人間が システム・エンジニア ではない──システム・エンジニア の人間もいるということなので、量化の存在記号を使えば、∃x となります。このように量化記号を使って変数が成立する状態を記述します (∀ と ∃ を使った例は 「いざない」 を読んでください)──量化記号を付与された変数を 「束縛変数」 といいます。単称命題に対して、∀ を付与された命題を 「全称命題」 といい、∃ を付与された命題を 「存在命題 (あるいは、特称命題)」 といいます。

 私は 「いざない」 を入門書として執筆したので、量化については詳しく記述していないので、量化が論証のなかで いかに重要な役割を果たしているかを知りたい人は、次の書物を読んでください──

  「数学の基礎」(シュプリンガー 数学 クラシックス)、ヒルベルト、ベルナイス 共著、吉田夏彦、渕野 昌 共訳

 この書物を読めば、量化記号の重要性がわかるでしょう。この書物のなかには量化記号の オンパレード ですから。そして、構文論 (記号演算) の重要性を この書物は教えてくれるでしょう。ただし、数学基礎論を初めて学習する人は読まないでください。もし読みたいなら、記号論理学を習得してからにしてください。
 入門の人は、「数学の基礎」 を読む前に、次の書物を読めばいいでしょう──

  「記号論理学の基礎」、ヒルベルト、アッケルマン 共著、石本 新、竹尾治一郎 共訳、大阪教育図書

 ただ、「数学の基礎」 のなかで、私は いまだに わからない式が いくつもあることを記しておきます。 □

 




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