2019年 1月15日 「1.3 総合的と分析的」 を読む >> 目次に もどる


 本節 (「1.3 総合的と分析的」) は、後に続く 「1.5 『意味および意義』 ならびに 『真』」 の伏線です──「1.1 語彙と文法」 で述べたように、TM は論理的意味論の技術であって、TM の完備性を保証するために、曖昧な (あるいは、恣意的な) ことば の 「意味」 を避けて、「真」 という概念を使っています。「真」 には次の二種類があります──

 (1) 導出的な L-真 (Logic 上の無矛盾 [ 無矛盾がない] ということ)

 (2) 事実的な F-真 (Facts に対比して一致する、ということ)

 そして、「分析的」 ということが 「導出的な L-真」 に対応して、「総合的」 ということが 「事実的な F-真」 に対応します。

 数学は 「超限 (無限)」 を前提にしていますが、有限な モノ を対象にした数学的な概念・技術については 「離散数学」 で扱われています (「離散」 というのは、「有限の」 ということです)。ちなみに、「有限」 は、「無限」 を前提にしないと定義できない。

 事業の範囲を限って、その範囲内の モノ を対象にして モデル を作成することは、勿論、「有限」 の領域での演算です。そして、その モデル を コンピュータ のなかに実装するには、その演算では、当然ながら、形式的 (論理的) に無矛盾でなかければならない。つまり、「事実」 (事業) を コンピュータ に写像する 「関数」 を考えなければならない。これが 「導出的な L-真」 の主題です。

 「論理規則」 に遵って構成した形式的構造が正しいかどうかは、実際の事業と対比して験証しなければならない。「導出的な L-真」 構造は、複数 作ることができます。たとえば、自然数を前提にして、「1」 を入力して 「3」 を出力する アルゴリズム (関数) は、複数 構成することができます。たとえば、足し算を前提にして 「1+1+1」 という演算もあれば、掛け算を前提にして 「1×3」 という演算もあります。そして、その どちらかが正しくて、どちらかが間違っている訳ではない (両方とも正しい)。つまり、「導出的な L-真」 は複数 存するということです。

 いっぽう、現実的事態は一つです (そして、その 「解釈」 は 幾通りも可能です)。数学上は、構文的に無矛盾な構造のなかに 「真とされる値」 が充足されることを 「意味論」 と云いますが──プログラミング 上の アルゴリズム も そうですが──、事業分析の モデル 上では、さらに、モデル (形式的構造) が現実 (事業構造) と一致していることが不可欠です。つまり、「導出的な L-真」 は複数存在しますが、そのなかで 「事実的な F-真」 は一つです──すなわち、事実と対比して一致している 「導出的 L-真」 が 「事実的 F-真」 になる、ということです。

 以上のようにして、事業分析の モデル では、「導出的 L-真」 (妥当な構造、無矛盾な構造) と 「事実的 F-真」 (真とされる値の充足、事実と一致している構造) を具えていなければならない。それらの概念を導入するために、前振りとして本節 (「1.3 総合的と分析的」) を綴りました。 □

 




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