2019年 9月15日 「4.3.5 タイプ 理論 (theory of types)」 を読む >> 目次に もどる


 タイプ 理論は、カントール が作った集合論の パラドックス を回避するために、ラッセル が提示した ソリューション です。当初の タイプ 理論は、構文論と意味論の両方を加味した理論だったのですが──その理論を 「分岐 タイプ 理論」 と云いますが──、意味論的な パラドックス は形式的構造のなかで扱うべきではないとされて、現代では構文論上の 「階」 のみを扱う 「単純 タイプ 理論」 が使われています。タイプ 理論の説明は、「いざない」 を読んでください。タイプ 理論の技術を要約すれば、次のとおり──

 (1) f (x) = { a, b, c,・・・}. (a, b, c,・・・は個体である)
 (2) F (f) = { f } ≠ { a, b, c,・・・}.

 タイプ F の サブタイプ は f であり、f の サブタイプ は 個体 a, b, c,・・・ であり、個体 a, b, c,・・・は F の サブタイプ でないということ。これを一般化して云えば、代入規則として、タイプ N の関数は タイプ (N − 1) の対象を代入項とするということ。ちなみに、(ラッセル の弟子であった) ウィトゲンシュタイン は タイプ 理論を認めていない [ 否定している ]──ウィトゲンシュタイン は、言語には 「階」 は存しないとして、「命題論理」(の技術の ひとつとなった 「真理値表」) を提示しています。ラッセル と ウィトゲンシュタイン の考えかたの違いは、(数学的な)「無限」 を認めるかどうかという点にあります [ ウィトゲンシュタイン は 「無限」 を認めていない ]。

 私は、セット (集合) を中核にして モデル TM の技術を整えたので、「タイプ、サブタイプ」 という語を使わないで、「セット、サブセット」 という語を使っています──ZF の公理系を TM の前提にしています。TM に対して意味論を強く適用した TM' では クラス 概念を使っていますが、あくまで 「セット で作って、クラス で整える」 という使いかたであって、セット については 「関係」 文法を公理としていますが、クラス を使って関係を組む文法を示してはいない(注)

 
 (注) 市販されいる 「TM の自動化 ツール」 は、セット の 「関係」 文法を クラス に対しても適用できるようにしていますが、その機能は 「絶対に」 使わないでください。その機能を使えば、TM を逸脱してしまいます。TM' は次の技術体系です──

 (1) モノ の集まり (entity の生成)
 (2) 「関係」 と 「関数」
 (3) 「関係」 文法
 (4) 集合 (セット)
 (5) 多値関数
 (6) クラス

 TM は (1) から (5) までの技術体系を云い、TM' は TM の技術体系に対して さらに (6) を付加した体系です。TM の体系を観てわかるとおりに、先ず 「モノ の集まり (entity)」(ほぼ セット と同じ) を生成して、「関係」 文法を使って全体構造 (文脈) を生成したあとに、セット になっていない entity を形式的に [ 論理的に ] 整えて セット と サブセット の整合的な関係に修整します。この時点で、関係 (関数) と変項 (セット) が ほとんど 定立されます──「すべて」 とは言わないで 「ほとんど」 と言った理由は、多値関数 (ひとつの項が複数の値をもつ関数) が存することもあるので、多値関数を一価関数に変換する演算 [ TM の体系のなかの (5)] が残されているからです。

 TM の体系のなかでは クラス を使っていない。クラス は、「構造」(TM で生成された事業構造) を意味論的に整えるために導入しました。すなわち、「関係」 文法を使って構成された 「構造」 に対して意味論的拡張として クラス を援用しているのであって、セット から生成された クラス は派生元の セット 以外とは 「関係」 をもたない。

 




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