思想の花びら 2020年 6月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  遠くから想像しているうちは、幸福もいいが、幸福はとらえようとすれば消えてしまうものだ、とよく人はいうが、これはあいまいな言葉だ。なるほど、競走の選手は、休息しながら、想像裡で幸福になろうと思えばなれる、しかし、この場合、想像は、働くのに適した肉体の中で働いているのだ、彼は月桂冠とはどういうものか知っている、ただもらうものではない、力を賭して獲得するから美しいのだ、というようなことを知っている。つまりこの場合想像とは、そういうふうにすべてを秩序だててみる行為の一つの効果である。(略) はじめての経験は苦痛しか与えぬものである。だから、トランプ を知らないものは、なにがそんなにおもしろいのだといぶかる。もらう前に与えねばならぬ、希望は常におのれに寄せ、事物に寄せてはならぬ。報酬として幸福を得るが、幸福を得る人は、これを追った人ではない、これを得る価値のあった人だ。要するに、僕らが喜びを得たのは僕らが望んだからであり、僕らの喜びを望んだからではない。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  過剰なものへの鋭敏な反撥、これは教養の最大のしるしではないかと私は思ふ。

 


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