思想の花びら 2022年11月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  知恵は本来悟性の徳だ、だからと言って、他の道徳がみな知恵という言葉で一括できるというふうに解してはならぬ。知恵だけにたよる道徳には、大胆さとか物をつくり出そうとする熱とかが欠けている、知恵の真反対の悪は、愚かさ、つまり軽率や偏見による過失だ。だから賢明だというにすぎぬ知恵の徳は、要するに過失に対するさまざまな警戒の総括であって、過失から生れぬ真理は、少年時をもたぬ大人のようなものだ。ただ、知恵、あるいは慎重といってもいいが、それがないとなにものも成熟しないだけだ。年をとっても子供のような人がいくらもある。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  真の怒りは罪悪感と祈りによって支えられなければならないと言ったが、このときの祈りとは持続する意志である。それは対象を明確に凝視する能力でなければならない。人間の転落の実相を冷静的確に指摘し弾劾してこそ怒りは美徳でありうる。パウロ の中に私はその純粋な一典型をみたかったのである。純粋という意味は、「我」 の怒りでなく、「信仰」 に由る怒りという意味である。

 


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