思想の花びら 2022年11月15日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  知恵の最初の果実は仕事だ、といって精神の仕事という意味ではない、そんなものはいったいどんなものだか僕は知らぬ、仕事というのは判断に対して物を準備する手か目の仕事の意味だ。なにもかもはじめから発明したいと思うのはなるほど立派なことだし、予想したり予言したりするあの性急な心の動きにしてもかけがえのないものだが、学校に上がって、本に書いてあること、著者の仮定したこと、結論したことを、わかりきったものでも真実として受け入れるのがやはり賢明だ。だから、物をたくさん写したり、習字をしたり、くりかえし本を読んだりすることはみなよいことで、ことに精神の努力と間違えられる緊張感、常に横道で働いているあの緊張感にとらわれずにやるようにするとよい。学校の勉強はすべて知恵に発するもので、勉強を軽蔑するのもこれにあまり関心をもちすぎるのも同様に危険である。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  「地獄篇」 第三曲の一節で、「怯懦の群」 に対して放たれた ダンテ の言葉だが、彼の深い怒りが背後にあるように思われる。怯懦の群とは何か。対決しなければならないときに、それを放棄した人間のことだ。むろん根本は神への信不信に発しているが、自分の直面したあらゆる問題に対して、それを己の身にしみて考えようとせず、傍観したり回避したりする人間の怠惰を弾劾しているのである。地獄に堕ちたものの中でも、最も侮辱すべき存在として描かれている点に注目したい。

 


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