思想の花びら 2023年 9月 1日


 ●  アラン (哲学者) のことば

  困難な仕事は忠実を要求する。天才の条件はいろいろあるが、自分自分に対する誓言をもち、そしてこれを守るということが必須の一条件だ。(略) だが、誓言は予言ではない、誓言するとは自分は欲しまたおこなうということを意味する。それについて 「愛を約束することはできぬ」 と人はいう、それは最初の感激を経験したときから間違いのないことだ、だからだれも感激などを約束したりしてはならないものだが、完全な愛とか幸福とかは、誓うことができるばかりでなく、誓わねばならぬものだ、音楽を学ぶ場合と同じことである。またよく腹に入れておかねばならぬことだが、みずからおのれの誓言にしばられると考えはならぬ、むしろ運命が誓言にしばられて馴らされるのだ。

 



 ●  亀井勝一郎 (批評家) のことば

  「徳」 を快楽の名によって呼んでいるところに、モンテーニュ の特徴がある。彼はそれに伴う苦業意識をみとめない。「徳」 は求めらるべきものだが、ここで 「求める」 といふこと自体が快楽であって、求道者のもつあのしかめ面に彼は反発し、からかっている。およそあらゆる哲学も、快楽を目的としなかったら、一体どこに価値があるのか。哲学の目的が死に方を学ぶことにあるということは、直ちに快楽の何であるかを知ることでなければならない。我々は 「死」 に対し、すぐ 「恐怖」 という観念を抱くが、モンテーニュ は 「死」 に対して 「快楽」 という観念を直接的にむすびつけている。あるいは快楽の中に死の姿をつねに見定めることをすすめる。

 


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