2020年 6月15日 「6.2.2-3 汎関係・零関係、関係の和・積・包摂・否定」 を読む >> 目次に もどる


 関係 R (x, y) が単項述語論理 P (x) と大きく違う点は、全称演算子 (∀) と存在演算子 (∃) の コンビネーション を生成できるという点です。例えば、論理式 ∃x P (x = y) を考えれば、x = y となるような x が存在するということを記述していますが、いまだ y という自由変項をふくんでいるので、「判断」 の叙述文にはなっていない──すなわち、y の値が走る範囲がきめられていないので、真偽を問うことができない。この論理式が 「判断」 となるためには、∃x ∃ y P (x = y) というように記述されてなければならない。

 「6.2.2. 汎関係・零関係」 と 「6.2.3. 関係の和、関係の積、関係の包摂、関係の否定」 では、2 項の関係を量化記号 (ただし、全称演算子のみ) を使って記述する やりかた を説明しています──単項述語論理の和、積、包摂、否定 (すなわち、選言、連言、仮言、否定の法則) については 「6.1.2. 論理的否定の法則」「6.1.3. 連言・選言・仮言の法則」 で述べていて、それらの法則を 2 項の関係に適用した法則を本節では述べているだけなので、構文論 (論理法則) 上の演算の手続きですから、機械的に演算するほうがいい。

 なお、本節の中身については、拙著 「論考」 の 77ページ・79ページ・81ページ のほうが上手に まとめられていると思う (苦笑)──「いざない」 の記述が素っ気なくなったのは、関係の論理法則は、量化の構文論に終始するので、量化記号の使いかただけを説明すればいいと私が判断したからです。ただ、「いざない」 では、数値量記号について書き落としていたので、ここで それを補足しておきます (「論考」 80ページ)──

 記述されている個体がいくつ存在するのかを数値量記号を使って表現する。

 (1) ∃n (x) P (x)   [ 性質 P をもつ個体が「少なくとも(al least)」 n 個は存在する ]。
 (2) ∃n (x)!P (x)  [ 性質 P をもつ個体が「高々(at most)」 n 個は存在する ]。
 (3) ∃n (x) !! P (x)  [ 性質 P をもつ個体が「ちょうど(exactly)」 n 個は存在する ]。

 例えば、「高々 3 個」 と言えば、「3 個以下」 を意味していて、「0 個でもよい」 ということです。
 これらの数値量記号は、数学の証明式のなかで ときおり 見かけますが、われわれ システム・エンジニア が 日ごろ 目にすることは先ずないでしょう。したがって、数値量記号を暗記しなくてもいいし、もし 文献のなかで それを見たら、そういう記述が 「論考」 のなかにあったことを思い出して、「論考」 (あるいは、本 ホームページ の この ページ) に当たってください。 □

 




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